@GB19940919’s diary

GB(https://twitter.com/GB19940919) (twitter→GB19940919)の映画感想雑記です。劇場で観た映画からWOWOWやサブスクで観た映画やドラマの感想です。

『コーダ あいのうた』

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『コーダ あいのうた』(CODA)

 

 2014年製作のフランス映画「エール!」のリメイク。海の町でやさしい両親と兄と暮らす高校生のルビー。彼女は家族の中で1人だけ耳が聞こえる。幼い頃から家族の耳となったルビーは家業の漁業も毎日欠かさず手伝っていた。新学期、合唱クラブに入部したルビーの歌の才能に気づいた顧問の先生は、都会の名門音楽大学の受験を強く勧めるが、 ルビーの歌声が聞こえない両親は娘の才能を信じられずにいた。家業の方が大事だと大反対する両親に、ルビーは自分の夢よりも家族の助けを続けることを決意するが……。実際に聴覚障害を持つ俳優たちがルビーの家族を演じる。タイトルの「CODA(コーダ)」は、「Children of Deaf Adults= “⽿の聴こえない両親に育てられた⼦ども”」のこと。

 

 女性監督による女性主人公の女性映画である。また1人の高校生が夢を色んな困難に出会いながら乗り越え夢を追う十代の成長物語でもある。家族で唯一聞こえるルビーは家庭でも職場でも家族がかなり頼りにされるので、かなり毎日が大変である。この時点でかなりルビーは十代ではなく大人として振る舞うことを余儀なくされているので、映画を観ているとルビーの周りにいる家族を含む大人たち全員があまり成熟しているとは言い切れない地域で暮らしている。これだけ大変でもルビーは家族を愛し想っている。だがその愛が同時にルビーを苦しめている。そこで入部した合唱クラブで初めてルビーの才能に気付き、ルビーをコーダではなく一人の才能ある人間と認知してくれる先生に出会い、音楽大学進学を目指すことになる。(まあその先生もルビーの家庭状況をよく理解せずあまり成熟しているとは言い切れない) この物語展開はしっかりとした青春映画である。

 

 そしてこの映画の核である家族愛であるが、本作は家族愛を素晴らしいものと苦しいもの両方のサイドから描いている。そしてそれを如実に表すのが、ルビーが大学試験で歌ったジョニ・ミッチェルの「Both Sides Now」という曲に現れている。これは歌の主人公が愛を両側(愛は受けるものであり、与えられものでもある。この映画では家族に対しての愛がそう)の視点に立って歌う名曲であるが、これはルビーの心情を表すのにぴったりの曲である。大学試験でいつも周りの視線を気にしているルビーが惜しげもなく試験をみている家族に向けて手話付きで歌うのだが、これは家族に対しての別離を宣言している曲でもあったと思う。文字通りこの後ルビーは大学に進学し家族のもとを離れていく。夢や才能のために例えどんな事情を抱えている家族でも、その犠牲になる必要はないとこの映画は言ってくれているのだ。私はそういう考えは断固賛成の立場である。

 

 この映画は主人公ルビー(エミリア・ジョーンズ)の家族は実際の聴覚障害がある役者が演じている。またコーダのルビーの生活描写はかなりリアルであった。(特に両親の音がでかいセックスが聞こえてくるのは辛すぎる) まあ欲を言うなら最近だと聴覚障害のある役者が主人公の映画がもっと作られてもいいんじゃないかと思った。またこの映画であまり社会に結びついていなかったルビーの母親が少し気になった。彼女はかなり孤独じゃないかなと思う。