@GB19940919’s diary

GB(https://twitter.com/GB19940919) (twitter→GB19940919)の映画感想雑記です。劇場で観た映画からWOWOWやサブスクで観た映画やドラマの感想です。

『マリウポリの20日間』YouTube

 

マリウポリ20日間』 (20 Days in Mariupol) [2023年ウクライナアメリカ]

 

2022年2月、ロシアがウクライナ東部ドネツク州の都市マリウポリへの侵攻を開始した。AP通信ウクライナ人記者ミスティスラフ・チェルノフは、取材のため仲間と共に現地へと向かう。ロシア軍の容赦ない攻撃により水や食糧の供給は途絶え、通信も遮断され、またたく間にマリウポリは孤立していく。海外メディアのほとんどが現地から撤退するなか、チェルノフたちはロシア軍に包囲された市内に留まり続け、戦火にさらされた人々の惨状を命がけで記録していく。やがて彼らは、滅びゆくマリウポリの姿と凄惨な現実を世界に伝えるため、つらい気持ちを抱きながらも市民たちを後に残し、ウクライナ軍の援護によって市内から決死の脱出を図る。監督はミスティスラフ・チェルノフ。

 

 監督が現地から配信したニュースや取材チームが撮影したマリウポリの映像を元に映画化したそう。日本では4月26日より劇場で公開されるそうだが、実は去年NHK BSの番組内で放送されたそうだ。監督がYouTubeでもいいからみてほしいということでYouTubeにあがっている方の動画を観た。英語字幕が入っているのをGoogle上で日本語で翻訳されていたモノを見たが、監督としても映像や惨劇を見てほしいという思いだろう。ただしこういう映画が日本で公開されるタイミングがどうしても1年以上遅れてしまうので、本作でとらえられている現状と今のマリウポリの現状に変化があることは知っておくべきだなと思うし、やはり映画館というフォーマットで観るより、YouTubeで公開されたタイミングで観るべきだったかもしれない。NHK BSもその重要性を分かっていて去年放送したのだろう。またこうやって映画として日本公開すると配給権が発生し、それこそ安易にNHKで再放送できなくなるのは果たしていいことなのだろうか、良くも悪くも話題である今のタイミングでこそテレビで放送したほうが良かったのではないかと思うのだが、どうなんでしょうか。

 

 アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞を受賞した際のスピーチで「おそらく私はこの壇上で、この映画が作られなければ良かったなどと言う最初の監督になるだろう」と発言したのですが、本当にその通りだと思う。それ以上のこの映画についてのコメントや感想は無意味である気がするが、一応書いておく。

 

 悲惨で目をとじたくなるような映像の合間に(パソコンの画面上でもやるせなくなる)、ナレーションを務めている監督の独白やカメラをまわしていることの罪悪感や使命感や望みの言葉が入るという構成だ。文字通り20日間カメラを回しているという字幕も入る。当たり前だがニュース映像として入ってくるのと、こうやって直接戦場の映像を見ているのでは感じ方が全然違う。戦争や侵略やいかにいけないことであるかを考えると同時に(これについては反論の余地なく全ての侵略と戦争に反対するべきだ)、映像のメディアにあり方についても考える。

 

 本作では侵略戦争というのは人が死ぬだけではなく、町や家や生活が破壊され、その人の人生が破壊されることでもあるというのが伝わってくる。また戦場の特徴であり、カメラを回す人間(圧倒的に男性が多いだろう)の思いものっかるので、おのずと本作の中で映る人々は女性(涙を流している人が多い)と子どもが多い。女性や子供を守ってあげないという家父長制の重しがカメラを通して伝わってくるが、これは同時に本作を観るであろう欧米社会の女性や子ども観、つまり女性や子供を守らなければいけいないという家父長制に訴えているのだろう。私は戦争にも反対だが、家父長制にも断固反対の立場にいるので、本作の作りや見せ方には申し訳ないが少し疑問もある。