@GB19940919’s diary

GB(https://twitter.com/GB19940919) (twitter→GB19940919)の映画感想雑記です。劇場で観た映画からWOWOWやサブスクで観た映画やドラマの感想です。

『グレート・インディアン・キッチン』

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『グレート・インディアン・キッチン』(The Great Indian ktchen)

 

 インド、ケーララ州北部のカリカットの町で、高位カーストの男女がお見合いで結婚する。夫は由緒ある家柄の出身で、伝統的な邸宅に暮らしている。一方、中東育ちで教育もあり、モダンな生活様式になじんだ妻は、結婚して夫とその両親とが同居する家で暮らしはじめるが、台所と寝室で男たちに奉仕するだけの生活に疑問を持ち始める。

 

 インド映画であるが、伝統的でメインストリームのインド映画と違って本作は上映時間も短くかなり低予算で作られていて、かつ映画の中で描かれている世界観が家庭の中というかなり狭い世界でおこっていることである。もちろんこれは狙ったものであると思う。また他のインド映画と大きく違う点が音楽の使い方である。映画の冒頭とラストにしか音楽は流れず、全体的に音楽をいかしていないようにして、主人公の妻が置かれている状況がいかに酷であるかを表している。そしてその反動でラストに流れる音楽が一人でたくましく生きていこうとする主人公の心情をより強く表している。いい意味でかなり日本の観客の期待を裏切る名作だと思う。

 

 この映画のポイントは妻は夫と結婚する前に定職についており、かつお互い高位カーストの二人である。その二人が結婚したのに、妻は仕事をやめさせられ、家庭に入ることを強制される。それからは辛すぎる家事と料理と義理の親の面倒が始まる。またそれだけでなく、夜は夫の性行為の相手をさせられ、夫の身の回りの世話をすべてやる。これだけ披露させておいて、時々やってくる夫の友人や親せきやお祈り関係の人々の世話で忙しい。これだけ辛いのに最悪なことに"主婦"という仕事がいかに神聖なものかを男たちにときふさせらえるのだ。この映画でもっつも残酷なシーンだった。いかに高位カーストでもそこには性差別といとんでもないものが存在しており、女性は人間でないことをこの映画は告発しているのだ。

 

 終始妻が重労働と暴力にさいなまれているジーンが続きかなり所謂"鬱映画"の部類に入るが、最後は妻が家を出ていく救いのシーンが差し込まれる。それでも実家に帰ってもなぜ家出したのかととがめられるのだ。また夫は新しい妻を見つけ始まりに戻っていく。女性は新しい人生を得るが、失ったものも大きい。男性は元の生き方に戻り特に何も失っていない。ああ、これがミソジニーと家父長制を温存した社会で生きていくリアルだ。