
『ディスクロージャー・デイ』 (Disclosure Day) [2026年アメリカ]
サイバーセキュリティの専門家であるダニエル・ケルナーは、謎の組織ワーデックスから機密情報を盗み出す。一方、カンザスシティのローカル局で気象予報士を務めるマーガレット・フェアチャイルドは、突如として自身の身に起こった異変に戸惑っていた。接点のないはずの2人は、謎めいた協力者ヒューゴ・ウェイクフィールドに導かれ、これまで数十年にわたり隠蔽されてきた、世界を揺るがす衝撃的な真実を知る。その秘密を人類に開示しようとする彼らの前に、ノア・スキャンロン率いるワーデックスが立ちはだかる。監督はスティーブン・スピルバーグ。脚本はデヴィッド・コープ。音楽はジョン・ウィリアムズ。出演はエミリー・ブラント(マーガレット)、ジョシュ・オコナー(ダニエル)、コリン・ファース(ノア)、コールマン・ドミンゴ(ヒューゴ)、イブ・ヒューソン(ジェーン)、ワイアット・ラッセル(ジャクソン)ほか。
直球にカソリックの話で驚くのだが、ユダヤ教徒のスピルバーグがわざわざこういう話を作るのだがら何か意味があるはずだ。アメリカの最高裁の半数以上がカソリックでアメリカの人口を全く反映しておらず、カソリックの教義で判決を出してしまいそうなアメリカの現実を意識しているのかな。そもそも本作の宇宙人は神様みたいだし、マーガレットは通信の守護天使である聖キアラだし、ダニエルは聖パウロだ。そんな囚われた神様=宇宙人をアメリカから解放する話なので、『教皇選挙』と同じくらいカソリックと権力についての映画かもしれない。
脚本が『宇宙戦争』なども脚本を担当しているデヴィッド・コープなのだが(『ジュラシック・パーク』シリーズが好きな人はつい反応してしまう名前)、私はあまりデヴィッド・コープが好きじゃないのだが(エリック・ロスと同じくらい未だに起用が止まらないのはなぜだろうか)、本作が微妙なのはやはり脚本が弱いからじゃないかと。またトニー・クシュナーと組んでくれないかな。ただ、そもそも本作の話自体は『未知との遭遇』が本作みたいになる予定だったらしく、ということは原案は70年代な訳だが、どうりで色々古臭いなと思う箇所があるわけだ。原案が70年代だからこそベテランのデヴィッド・コープが起用されたのかな。
大事な情報は市民の共有財産と知る権利だ。タイトル通り"開示"することについての映画で、その開示をするのに利用するのがメディア(報道)なのだが、ラストのみんなが電波をつないで生放送していく感じは、同じくスピルバーグの『ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書』を思い出した。本作は『未知との遭遇』×『ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書』だ。ただ"開示"したことで、今時あんな感じでみんな画面に夢中になるかは正直微妙だ。そもそもみんなあの宇宙人観たら「E.T.だ!」言うやつ絶対いるはずでしょ、現実では。でもその固有名詞は出せないのがスティーブン・スピルバーグのユニバースなんだよ。
宇宙人がせっかく出てくるのに何か退屈なのはなぜだろうか。『未知との遭遇』みたいに未知との出会いではなく、未知との交渉だからかな。もうめちゃくちゃな世界で、未知がすでに存在している世界でどうやって世界を修正していけばいいだろうか。何となくここにスピルバーグの自問自答がある気がする。このへんは去年の『スーパーマン』もすでにスーパーマンがいる世界を描いていたな。
ただ「宇宙人はいた、アメリカ政府が隠してた」的な陰謀論にそった映画で、むしろエサを与えているのはちょっと危険というか、それは良いのかスピルバーグよ...。スピルバーグってむしろ陰謀論のやり玉によくあがる人物だけど、そんな当人がまさか本気で陰謀論っぽい映画作って来るとは思わなかったよ。心配なんですけど。しかもその宇宙人がグレイ・タイプで古いなと思う一方で、あれだけ批判された『インディ・ジョーンズ/クリスタルスカルの王国』をまだ擦ってくるとは思わなかった。
予告編で今まで以上に私は宇宙人の存在を信じているよと屈託のない笑顔で言っていたけど、本当に子供みたいな人だなと改めて思った(そこが彼の魅力なのだけど)。ただ子供のころの夢にとらわれすぎてしまっていないかと思うのだけど、まあそういう人じゃないとこういう映画は作れないよ。それは絶対的な作家性だよ。
とまあ色々文句を言ってしまったけど、相対的に観て本作のことは好きだよ。スピルバーグだよ、嫌いになるわけないじゃん。好きなので感想に客観性が無くなってしまうんだよ。スピルバーグに思い入れが無い普通の人が本作を観たらおそらくクソ退屈だと思うけど。話は「?」でもカーチェイスとかジョン・ウィリアムズの音楽はすごいのは伝わるはずだ。まさかここで『激突!』回帰してくるとは思わなかった。ここにきて原点回帰だ。若がえってないか?こりゃ、まだまだ新作を作ってくれそうだ。一生付き合いますよ。





