@GB19940919’s diary

GB(https://twitter.com/GB19940919) (twitter→GB19940919)の映画感想雑記です。劇場で観た映画からWOWOWやサブスクで観た映画やドラマの感想です。

『パワー・オブ・ザ・ドッグ』NETFLIX

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『パワー・オブ・ザ・ドッグ』(The Power Of The Dog)

 

大牧場主のフィル・バーバンクと弟ジョージの兄弟は、地元の未亡人ローズと出会う。ジョージはローズの心を慰め、やがて彼女と結婚して家に迎え入れる。そのことをよく思わないフィルは、2人やローズの連れ子のピーターに対して冷酷な仕打ちをする。しかし、そんなフィルの態度にも次第に変化が生じる。

 

 NETFLIXオリジナル作品だが、西部の話だし話題作なので映画館でじっかい観てきた。映画の舞台が1925年と大変モダンである。予告編だけ見るとフロンティアと伝統的な西部劇なのかと思っていたが、舞台設定がモダンなのは驚いた。物語は章ごとに分かれており、全体で6章に分かれている。

 

 まずアメリカの中西部を描いているが、物語の場面は数か所しかなく、大変動きが少ない映画なのに、観ていて全く飽きない。またこういう映画にありがちな虐げられた周辺の女性たちはあまり出てこず(物語の冒頭に娼館みたいなところに行くシーンがあるんだけど、女性はヌードになっていない。むしろヌードになっているのは男性たちの方で、そしてこのヌードは大変意味のあるシーンになっている。そしてそのヌードは美しく撮られている。)、男性の物語を作るのに女性たちを虐げるシーンは必要ないという監督の心意気を感じる。むしろ監督は徹底して男性についての映画を作ろうとしているのが良く分かる。(この辺がサム・エリオットは気に入らなかったんだろうと思う。まあ彼のこの映画に対しての反応がまさしくこの映画における男性たちのあり様を示していて面白い。)

 

 映画は表面的に見れば"有害な男らしさ"をこじらせた男の成れの果てについての映画の素養をもっているし(そしてこれはアメリカ映画の永遠のテーマであると共に最近のアメリカ映画の流行である)、またそういう男に振り回される周囲の人たちの生きづらさについてのテーマも持っており、映画の舞台は1925年なのに、現代を生きる私たちと共通点がある。しかしこの映画はただ"有害な男らしさ"を描いた作品ではないな思うのが、これは一度何かを決意して生きていく人間はとんでもない悪魔にもなれるということを含んだ作品でもある。そのテーマを見事に体現していたのが、劇中で出てくるピーターである。というか映画の冒頭でピーターがある決意を喋るんだけど、本当にラストにはその冒頭に帰結していたので、この映画は大変丁寧な映画でもあったんだなと思う。観れて良かった。