@GB19940919’s diary

GB(https://twitter.com/GB19940919) (twitter→GB19940919)の映画感想雑記です。劇場で観た映画からWOWOWやサブスクで観た映画やドラマの感想です。

『フォーリング 50年分の想い出』

ヴィコ・モーテンセンはそれでいいかもしれないけど、私たちは良くないんだよ

 

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『フォーリング 50年分の想い出』(Falling)

 

ビゴ・モーテンセンが監督デビューを果たし、自身の親子関係を反映させた半自伝的な脚本をもとに描いたヒューマンドラマ。航空機のパイロットであるジョンは、パートナーのエリックや養女モニカとロサンゼルスで暮らしている。ある時、田舎で農場を経営する父ウィリスが認知症となり、引退後に住む家を探すためジョンのもとへやって来る。ジョンは思春期の頃から保守的な父との間に心の溝があったが、認知症で過去と現在の出来事が混濁する父と向き合ううちに父子の50年間の記憶がよみがえり、不器用な父の秘めた思いに気づいていく。モーテンセンが自ら息子ジョン役を務め、脚本と音楽も担当。

 

 認知症の父親の発言をどれだけ許せるのかと、観客を試してくるぐらい父ウィリスの発言が本当にひどい。人種差別、男女問わず性差別、ホモフォビア、出身地差別、職業差別等あらゆる許されない発言をしてくる。おそらく認知症からしょうがないよねとうことらしいが、この映画を観る限りだと、認知症だからというよりかは元からそういう差別主義な発言や振舞いをずっとしてきており、そしてそれを指摘されず許され続けているような人生を送ってきたようだ。それにジョンは慣れてしまって父親を話して説得させようとか考えを改めてやろうみたいな努力はせず、ただ親子として何もせず世話だけして、あとはこの頑固クソジジイを愛して、受け入れてあげようよというオチである。ビコの自伝的な内容らしく、ビコはそうやって父親を許してあげて、幸せな人生をおくれているんだろうね、だったらそれを胸の内にだけしまって静かに生きていればいい。そうやって差別をしちゃうけど愛せるでしょ俺のおやじ的な特権を振りかざして生きていればいいじゃん、でもね、それを映画化にしてこの親父をどうか愛してくれ、俺たちの愛すべき父子関係を見てくれというのなら、全力で非難してやろう。いくぞ...

 

 まずね、ビコよ。あんたシスヘテロの白人男性でしょ。でもこの映画ではお前はさ、ゲイの設定にして、しかもパートナーはアジア系で子どももいる設定にしている。あのね、これ相手のアジア系のパートナーからしたら、あんなクソ差別主義親父がいるのは辛いよ。しかも本作では大変都合の良い存在である。あとさ、娘もいるのに、あんなクソ親父の発言とか振舞いを許してあげるのって、一人のおやとしてどうするのさ。ただでさえ差別的な世の中で、娘はこれからもっとたくさん辛い場面に遭遇するかもしれないのにさ。だったら家庭の場所ぐらいは差熱は許されないんだという価値観を徹底させてあげないと、彼女がこの世界を生きていけないのよ。脚本書く時の倫理観どうなってんのよ、ビコよ。設定白人特権が抜け出せずに作ってしまった設定だよね。

 

 次に細かい設定だが、ジョンの自宅の冷蔵庫に貼ってあるオバマの写真を見て父ウィリスがNワードを使って「あいつに投票したのか」的な発言をする。まずNワードを使ったのに、劇中でそれを非難することがない。これは大変まずい。次にその政治談議の流れでウィリスが共和党のマケインに投票した話になるのだが、まずマケインとウィリスを比べるのって、大変マケインに失礼だ。マケインは議論場で有権者オバマを政治とは関係な部分で批判した時、ちゃんとその批判はただしくないとおさめるくらいの器の人だからだ。マケインはウィリスやジョンよりよっぽど立派な人だ。というかこのクソ映画で政治の話をするのは大変よろしくない。オバマとマケインに謝るべきだ。

 

 あとジョンの母、つまりウィリスの妻の役どころは大変都合の良い存在だ。最後まで男二人の目線でしか語られることしかなく、彼女の主体性が発揮させられるシーンは皆無だ。そして挙句の果てに最後のヌードシーン。本当に都合の良い存在だった。

 

 何というか最近のアメリカ映画は大統領がダメな父親を煮詰めたような存在で、その反動で有害な男性性や父親との関係を描く良作がたくさんあったので、それらと比べるとやばすぎる価値観の映画である。我々は日常生活でクソジジイにたくさん遭遇したりしているのだがら、芸術の世界ぐらいは倒され、許さなくてもいいんだという描き方をしてほしいと思う。あと本作は認知症の描き方もよくない。この映画を観るくらいなら同年に公開された『ファーザー』のほうがずっと良い。