『私ときどきレッサーパンダ』(Turning Red)
伝統を重んじる家庭に生まれ、両親を敬い、親の期待に応えようと頑張るティーンエイジャーの少女メイ。母親の前ではいつもマジメで頑張り屋でいる彼女だったが、本当は流行りの音楽やアイドルも大好きで、恋をしたり、友達とハメをはずして遊んだり、やりたいこともたくさんある。母親の前で本当の自分を隠す日々を送るメイは、本当の自分がわからなくなり、感情をコントロールすることができなくなってしまう。悩んだまま眠りについた彼女は、翌朝目を覚ますと、なんとレッサーパンダになっていた。突然のことに驚くメイ。しかし、その変身の裏にはある秘密があった。
まず今までのピクサーとは全く違うと思ったのがギャグのセンスと疾走感あるテンポである。これが凄く面白い。また主人公のメイリンがオタクなんだけど、これが見事にオタクあるあるを存分に出してきて、観ているこっちが共感性羞恥に襲われる始末...それくらいピクサーの作品に共感したのは初めてだ。これはどう考えてもアジア系女性のドミー・シー監督の功績だ。生きているうちにピクサーでこんなに共感できる物語が観れるとは思わなかった。ありがとう。
また本作はモフモフのレッサーパンダを封印するのではなく、自分の人生と一部として受け入れるというパターンもすごく良くて、これは昨今の女性のホラー映画にある結末から影響を受けたのかなと思う。
そして一番リアルだと思ったのが、メイリンとその女友達の友情である。友達の造形も見事だけど、友達としての関係性も凄くリアルで良かった。