有害な男性性から脱するにはまず失敗を求めること
『ラスト・フル・メジャー 知られざる英雄の真実』(The Last Full Measure)
ウィリアム・H・ピッツェンバーガーはアメリカ空軍のパラレスキュー部隊に所属し、ベトナムで自軍・友軍の兵士たちを次々と救助していた。1966年4月11日、ピッツェンバーガーは戦場に取り残された兵士を救い出すべく、ヘリコプターで現地へと向かった。ところが、敵軍の攻撃が予想以上に激しく、パイロットはヘリコプターを滞空させることが困難だと判断し、救助活動の途中で基地へ引き上げる決断を下した。パイロットはピッツェンバーガーを乗せようとしたが、ピッツェンバーガーは残された兵士たちを守るために敢えて留まることにした。彼の奮戦のお陰で、9人の兵士たちが生還できた。しかし、ピッツェンバーガーは敵軍の銃弾に倒れてしまった。
1998年、ピッツェンバーガーの両親と友人たちは彼に名誉勲章を授与して欲しいと国防総省に請願した。その請願を精査することになったのは、キャリア官僚のスコット・ハフマンであった。ハフマンが退役軍人たちの証言を集め始めたところ、予想もしなかった事実を知ることになった。ピッツェンバーガーに長らく名誉勲章が授与されなかったことの背後には、とある陰謀が隠されていたのである。
この映画で興味深いのは、ピッツバーガーの偉業をたたえることは、軍の失敗を認めるということなのだが、失敗と言うのは恥ずべきことで英雄にはふさわしくないということだと考えられている。失敗を認めることがおそらく有害な男性性で出来上がっていたであろうベトナム戦争時のアメリカ軍では禁じられていたのだろう。そして年月を越えて有害な男性性から脱するようにピッツバーガーに助けられた男性たちは(時に涙を流しながら)、男性性から解放されるように話をしてくれる。ものすごく"最近のテーマ"を含んだ映画であった。
またベトナム戦争後の兵士たちのPTSDをとても丁寧に描いた作品ではあるが、かなりアメリカ軍を英雄視した映画でもある。好きか嫌いで行ったらかなり嫌いなタイプの映画だ。
またキャストもめちゃくちゃ豪華で、アベンジャーズかと思うくらいだ。そして先日亡くなったクリストファー・プラマーが出ている...RIP