@GB19940919’s diary

GB(https://twitter.com/GB19940919) (twitter→GB19940919)の映画感想雑記です。劇場で観た映画からWOWOWやサブスクで観た映画やドラマの感想です。

『コール・ジェーンー女性たちの秘密の電話ー』

 

『コール・ジェーンー女性たちの秘密の電話ー』 (Call Jane) [2022年アメリカ]

 

1968年、シカゴ。裕福な主婦ジョイは何不自由ない暮らしを送っていたが、2人目の子どもの妊娠時に心臓の病気が悪化してしまう。唯一の治療法は妊娠をやめることだと担当医に言われたものの、当時の法律で中絶は許されておらず、地元病院の責任者である男性全員から手術を拒否されてしまう。そんな中、ジョイは街で目にした張り紙から、違法だが安全な中絶手術を提供するアンダーグラウンドな団体「ジェーン」にたどり着く。その後ジョイは「ジェーン」の一員となり、中絶が必要な女性たちを救うべく奔走するが……。監督はフィリス・ナジー。出演はエリザベス・バンクス(ジョイ)、シガニー・ウィーバー(バージニア)、ケイト・マーラ(ラナ)、クリス・メッシーナ(ウィル)ほか。

 

 『キャロル』の脚本を担当したフィリス・ナジーが監督。しっかりとその時代の雰囲気が伝わってくる撮影とスタイルが素晴らしい。少なからずトッド・ヘインズから影響を受けているであろう。町中からひょっこりジュリアン・ムーアケイト・ブランシェットが出てきても違和感ない。ただ主演がエリザベス・バンクスということだけあって、少しコメディたっちで演出されているのだが、監督と脚本との間に温度差みたいなのができていた。

 

 今まで社会活動と無縁だった女性が活動に熱心に取り組んでいくまでを肯定的に不器用に描く。貧富も階級も違うけど『未来を花束にして』を思い出したり。この映画では女性は色んな理由で中絶するのだから、結局のところどんな女性でもすぐに確実に中絶にアクセスできるようにするべきだというラストにしている(本当にそうあるべきだ)。ここに出てくるジェーンたちは自分が担当する女性たちを優先して中絶させてあげたいと思っているが、まさに全ての女性たちがアクセスできるようになればこんな優先がどうだとかはいらないのだ。ただ今のアメリカの状況を見ると、まだまだジェーンたちが活躍しないといけないのが何とも皮肉だ。

 

 ジョイの夫は別にミソジニストというわけではないが、出産すると死亡するリスクがある妻の出産を止めたいと思っているが、法律がそれを許さない。じゃあ法律を変えるべきだ(製作者の視点)と思わせるためにいる存在だなと思った。夫としての良い悪いというより、プロット上必要な存在だけって感じ。それに男性の傲慢さと性差別と医師会の性差別は、「女性の医者がいない」「ジョイに中絶できないと言い放ちながら、平気で妊婦の前で喫煙する」などのシーンで象徴的に描かれる。

 

 まあ同日公開の『デューン 砂の惑星 PART2』は非常にプロライフ的な話で、何よりハリウッドというのは基本的に保守的で、あんなプロライフ的なメッセージのある映画に巨大投資するところなので、こういう中絶を描いた作品も頑張って欲しいと心から思うし、これからも絶対作り続けて欲しと思う。