@GB19940919’s diary

GB(https://twitter.com/GB19940919) (twitter→GB19940919)の映画感想雑記です。劇場で観た映画からWOWOWやサブスクで観た映画やドラマの感想です。

『落下の解剖学』

 

『落下の解剖学』 (Anatomie d'une chute) [2023年フランス]

 

人里離れた雪山の山荘で、視覚障がいをもつ11歳の少年が血を流して倒れていた父親を発見し、悲鳴を聞いた母親が救助を要請するが、父親はすでに息絶えていた。当初は転落死と思われたが、その死には不審な点も多く、前日に夫婦ゲンカをしていたことなどから、妻であるベストセラー作家のサンドラに夫殺しの疑いがかけられていく。息子に対して必死に自らの無罪を主張するサンドラだったが、事件の真相が明らかになっていくなかで、仲むつまじいと思われていた家族像とは裏腹の、夫婦のあいだに隠された秘密や嘘が露わになっていく。監督はジュスティーヌ・トリエ。脚本はジュスティーヌ・トリエ、アルチュール・アラリ。出演はサンドラ・ヒュラー(サンドラ)、サミュエル・セイス(サミュエル)、スワン・アルロー(ヴィンセント)、ミロ・マシャド・グラネール(ダニエル)ほか。

 

 脚本を共同で担当しているアルチュール・アラリは監督の夫だそうで、ということは夫婦の実体験もありそうだ。というか本作の夫婦の名前が役者の名前から付けられているのを見ると、何とも示唆的だ。

 

 雪山の山荘が舞台で夫が物書きでスランプで息子の名前がダニエルでマッシュルームカットって、『シャイニング』じゃんって思ったけど、こういうスランプで家族に当たり散らすってけっこうありふれた芸術夫婦の話なんだろう。ずっと家にいるしね。

 

 ラストに大どんでん返しがあるかと思いきや最後まで誠実な話だった。夫の死因は最後まで明かされずモヤモヤしたけど、それがメインの話ではないのだろう。私は夫のサミュエルが妻の意見を無視してフランスの雪山の山荘に住みことを決めたという過去が判明した時から、イヤな夫だと思った。受動的攻撃の最たる例みたいな男だよ、あれは。

 

 それにしてもフランスの裁判は進行を無視して検察と弁護があんなに自分勝手にしゃべるんだね。あの自分を置き去りに一方的に喋られる恐怖。そういえばサンドラは裁判前にサミュエルのことを一方的に喋っていたのだが、あれはサミュエルの体験を疑似的にサンドラも体験することの恐怖だろうね。ちょっとかわいそうだけど。相手の脈絡を無視して自分の意見を一方的に押し付ける現代を風刺しているのかも。

 

 ただ息子の視覚障害を物語の重要事項を判断することに使っていて、そこは個人的に好きではなかった。最近この手の障害を映画の演出に使うのが増えてきて、由々しき事態だ。あとさすがに裁判のシーンが長く感じた、このシーン必要?みたいに感じた。