@GB19940919’s diary

GB(https://twitter.com/GB19940919) (twitter→GB19940919)の映画感想雑記です。劇場で観た映画からWOWOWやサブスクで観た映画やドラマの感想です。

『スペンサー ダイアナの決意』

『スペンサー ダイアナの決意』(Spencer)

ダイアナがその後の人生を変える決断をしたといわれる、1991年のクリスマス休暇を描いた。1991年のクリスマス。ダイアナ妃とチャールズ皇太子の夫婦関係は冷え切り、世間では不倫や離婚の噂が飛び交っていた。しかしエリザベス女王の私邸サンドリンガム・ハウスに集まった王族たちは、ダイアナ以外の誰もが平穏を装い、何事もなかったかのように過ごしている。息子たちと過ごす時間を除いて、ダイアナが自分らしくいられる時間はどこにもなく、ディナー時も礼拝時も常に誰かに見られ、彼女の精神は限界に達していた。追い詰められたダイアナは故郷サンドリンガムで、その後の人生を変える重大な決断をする。

 

  個人的に大好きな作品だった。ダイアナの人生の自伝ではなく、彼女のある時期に焦点を当てて、現代的な観点で脚本を書き、非英国人的な視線を当てて、一人の女性の物語として共感を呼べるように作ったのが功をそうしたと思う。

 

 ところどころ登場人物より主張してくるジョン・グリーンウッドが担当したスコアは素晴らしく、ダイアナの不安や鬱な状態をよく表現している。これは今年観て彼が同じくスコアを担当した『パワー・オブ・ザ・ドッグ』同様だと思う。

 

 撮影も素晴らしく、細かく何もないようなシーンでも意味があるように撮影されており気を抜けさせないようにするのが凄い。(ビリヤード台でチャールズと対峙しているシーンのシンメトリーとビリヤードの玉の演出は見事) どこを切り取っても自然で美しい。スコアをもあいまって観ていて大変疲れるが、逆に映画の力や魅力を存分に感じさせる。撮影は『燃ゆる女の肖像』を担当したクレア・マトンだというのだから納得だ。そういえばどことなく生家でアン女王の幽霊を見るシーンとか似ているシーンはたくさんあったな。

 

 メイクは日本人の吉原若菜さんが担当。ダイアナのようだが、しっかりとクリステン・スチュアートの魅力をいかしている。(私が完全別人メイクが好きじゃないから余計そのように感じだ) 衣装は全面シャネルが担当したそうで大変景気が良い。着ている衣装の種類でダイアナの気合いの入れ方とか彼女の不器用さが見て取れるし。(不倫相手に同じ真珠のネックレスをプレゼントする野郎に服装がどうとか注意されたかないよな本当に) ラストのカジュアルな服装にもしっかりと意味を持たせていて非常に分かりやすい。しかもそのラストのドライブでポップソングを息子二人で口ずさむのもダイアナの解放が描かれていて、こちらも分かりやすい。この映画は目にも耳にも非常に分かりやすい。この分かりやすさ、ありがたい。映画のパワーだし、いや本当にアカデミー作品賞にノミニーされても良かったじゃん。

 

 そして言わずもがな、ダイアナ・スペンサーを演じたクリステン・スチュアートは素晴らしい。カースワードが突然飛び出したり、おさえたりしないといけないのに我慢できないシーンとか見事だったよ。これを際立たせるためにカリスマ性ある役者をキャスティングしたのは大成功だ。そしてこの映画は何より非英国人であることも大事なので。

 

 本作では英国王室のしがらみとか、家父長制とか伝統がいかに偽物であるかを再確認させるのだが、ダイアナの「とにかくムカツク」というセリフに全てが集結している気がした。またダイアナとマギーの連帯も素晴らしい。確かにマギーのダイアナへのカミングアウトは必要ない気がするが、ダイアナのゲイ・アイコン度を考えれば演出として入れたくなる気もする。

 

 あとこの映画非常にスタンリー・キューブリックの『シャイニング』にそっくりな気がするのだが、それを指摘するサイトを見つけた。撮影も似ているが(特に地下室を歩くダイアナとかビリヤード台とか)、話の内容も似ているよな。(ラスト妻子が夫おいて出ていくとことか、チャールズはオーバールック・ホテルに取り込まれてしまったジャック・トランス同様に英国王室に取り込まれ続けるんだろうな)