@GB19940919’s diary

GB(https://twitter.com/GB19940919) (twitter→GB19940919)の映画感想雑記です。劇場で観た映画からWOWOWやサブスクで観た映画やドラマの感想です。

『Firebird ファイアバード』

 

Firebird ファイアバード』 (Firebid) [2021年イギリス・エストニア]

 

1970年代後半、ソ連占領下のエストニア。役者を夢見る若き二等兵セルゲイは、間も無く兵役を終えようとしていた。ある日、セルゲイと同じ基地にパイロット将校のロマンが配属される。写真という共通の趣味を持つ2人はすぐにひかれ合い恋に落ちるが、当時のソ連では同性愛は法的に固く禁じられており、発覚すれば厳しく処罰されていた。一方、同僚の女性将校ルイーザもロマンに恋心を抱いていた。そんな中、セルゲイとロマンの関係を疑うクズネツォフ大佐は、2人の身辺調査に乗り出す。監督はペーテル・レバネ。出演はトム・プライアー(セルゲイ)、オレグ・ザゴロドニー(ロマン)、ダイアナ・ポザルスカヤ(ルイーザ)ほか。

 

 脚本に監督とトム・ブライアーが参加している他セルゲイ・フェティソフ本人も脚本に参加しているため、かなり本人の意向や経験が反映されている映画だろう。ソ連が舞台の映画だが、話されている言語は英語である。

 

 リアルな視線で語られるのでけっこう中身はオーソドックスな恋愛映画であり、不倫の話でもある。前半の軍の生活でセルゲイとロマンが出会い惹かれて恋に落ちるさまは、『アナザー・カントリー』みたいな雰囲気がある。後半はルイーザと結婚したロマンがセルゲイと不倫のような逢引きを続ける様は『ブロークバック・マウンテン』のようでもある。けっこうセルゲイとロマンが自然の中で堂々と恋愛を繰り広げるあたりをしつこく撮っていて、同性愛が不自然じゃない、自然な行為であることを示している。

 

 オーソドックスな恋愛映画であるが、やはり同性愛が禁じられているのでオーソドックスと言ってはいけない気もするが、"自然だけど自然ではない"二人が何かにおびえている"見られている"という感覚をしっかり観客に伝えてくる。

 

 最後のセルゲイがロマン残した手紙は少し強引でロマンの生活を壊してしまっているのでワガママな印象も残るけど(それゆえルイーザが気の毒に見えるのだ)、同性愛が禁じられてなかったら誰も苦しむことは無かったんだよね。前述したけど『ブロークバック・マウンテン』は女性たちもよく描けていて嘘をついた男性に対してちゃんとそれを訴える場面があったけど、本作はそういう女性への視点は感じなかったな。

 

 本作のロマンは自殺ではないにしろ、結果的に死んでいる。去年観た『CLOSE/クローズ』『シチリア・サマー』『緑の夜』に続き、本作でもクィアな人物が死んでいるので、ちょっと辟易してきたというか、配給する側が意図的にそういう映画を選んでいる気がするのだが。もうちょっとそういう悲しい話は食傷気味だな。ちょい役でも良いので、クィアな人が幸福を享受できる映画が観たい。