@GB19940919’s diary

GB(https://twitter.com/GB19940919) (twitter→GB19940919)の映画感想雑記です。劇場で観た映画からWOWOWやサブスクで観た映画やドラマの感想です。

『ジャンヌ・デュ・バリー 国王最期の愛人』

 

『ジャンヌ・デュ・バリー 国王最期の愛人』 (Jeanne du Barry) [2023年フランス]



貧しいお針子の私生児として生まれたジャンヌは、類まれな美貌と知性で貴族の男たちを虜にし、社交界で注目を集めるように。ついにベルサイユ宮殿に足を踏み入れた彼女は、国王ルイ15世とまたたく間に恋に落ちる。生きる活力を失っていた国王の希望の光となり、彼の公妾の座に就いたジャンヌ。しかし労働者階級の庶民が国王の愛人となるのはタブーであり、さらに堅苦しいマナーやルールを平然と無視するジャンヌは宮廷内で嫌われ者となってしまう。王太子マリー・アントワネットも、そんな彼女を疎ましく思っていた。監督はマイウェン。出演はマイウェン(ジャンヌ・デュ・バリー)、ジョニー・デップ(ルイ15世)、バンジャマン・ラベルネ(ラ・ボルド)ほか。

 

 マイウェンとジョニー・デップがけっこう問題起こしている人たちで、特にジョニー・デップなんて...そんな彼が本作を復帰作のようになっているのが映画ファンとしては微妙なのだが、ただこういう問題を起こした男性を主演にして映画を撮るみたいな行為そのものが今まで男性監督がたくさんしてきたことだが、それをとうとう女性の監督でやる人が出てきたかと言う(マイウェンがそもそも著名な役者だからこそ成せる技でもあるが)、ある種の心地悪い業界の進化を感じることもできて...

 

 お話は宮廷の中で起こる感傷的な恋愛映画みたいだった。ルイ15世もけっこういい感じで描かれていて、その中でなんとかルイ15世に気に入られようと努力するジャンヌは魅力的だ。そんなジャンヌを支えるお世話役のラ・ボルドとの友情も良い。たぶんこの映画を観ている人の大半はルイ15世との恋愛よりラ・ボルドとの友情のほうが良いと感じるはずで、この辺はちょっと少女漫画みたいな雰囲気もある。ジャンヌみたいな純真さと少年ぽさと制限された自由を心から楽しむ女性に権力を持った男性たちって本当に弱いよね...自分の中にある少年の要素を刺激してくれるんだろうね。

 

 ルイ15世ルイ15世の孫もお世話役のラ・ボルドも、そしてジャンヌを出世の道具にしか見えてないバリーやジャンヌを最初に見出した貴族のジジイ(ジャンヌを時にセックスの道具にもする)などこの映画に出てくる男性たちはみんな良い奴に描かれている一方で、女性たちはあまり良い風に描かれていない。ジャンヌを男性たちに最初に売った母親、ジャンヌの下品さを疎んだシスター、ジャンヌの読書の才能の気に入ったのにも関わらず自分の夫が寝取られてしまうのではないかという疑念からけっきょく家から追い出した貴族の夫人、サロンで有名になるも娼婦あることを理由に疎む上流階級の妻たち、ルイ15世の娘たち、そしてマリーアントワネットからも疎まれる。きっとこれはマイウェン自身の経験もあるだろうな。気の強い女性が男性社会の中で生きていくにはある種ミソジニーを内面化するし、男性について同情的になるだろう。そのマイウェン自身の経験がジャンヌへの共感に見て取れる。確かに今どき足を引っ張り合う女性たちの姿を描く必要性なんてないと思うが(というか陳腐だ)、そういう監督の生き方をきっと苦労したであろうジャンヌに共感するという気持ちは理解したいと思った。きっとマイウェンもジャンヌも男性のような自由を享受したいんだよね(誰もそうだと思うが)。