@GB19940919’s diary

GB(https://twitter.com/GB19940919) (twitter→GB19940919)の映画感想雑記です。劇場で観た映画からWOWOWやサブスクで観た映画やドラマの感想です。

『CLOSE/クロース』

 

『CLOSE/クロース』(Close) [2022年ベルギー・フランス・オランダ]

 

ベルギーの13歳のレオとレミは、学校でも放課後でも一緒に時間を過ごす大親友だった。しかし、ある時、2人の親密すぎる間柄をクラスメイトにからかわれたことで、レオはレミへの接し方に戸惑い、そっけない態度をとってしまう。そのせいで気まずい雰囲気になる中、2人は些細なことで大ゲンカをしてしまい……。

 

監督はルーカス・ドン。出演はエデン・ダンブリン(レオ)、グスタフ・ドゥ・ワエル(レミ)ほか。

 

 映像も非常に洗練され綺麗で(舞台はベルギーだ)、自然な会話をそのまま映画にしている。セリフが自然なぶん、セリフ以上にモノを言っているのが登場人物の表情である。表情の変化で今この人物はどんな気持ちを抱いているのかを観客に想像させるため、本作では登場人物の胸より上からのショットが多く、画面が登場人物の顔で埋まるようなシーンがたくさんあった。複雑な子供時代をそのまま複雑に描写している点でセリーヌ・シマア監督との類似もできる。

 

 ルーカス・ドン監督の前作『Girl/ガール』同様に本作も思春期の子供たちに起こる心理的な変化や葛藤などをとても丁寧に描写する一方で、とてもショッキングな出来事を取り扱っていて観客に重い気持ちを抱かせるのも前作同様である。ただ観客に衝撃を与えて終わらせるだけの映画ではなく(本作での衝撃は自殺だったが)、そのショッキングな出来事から立ち直ったり気持ちの整理をつかせるような描写も丁寧でしっかり子供たちの気持ちに寄り添った作品だった。逃げてる印象も抱かなかったので、そう意味では今年公開された是枝裕和監督の『怪物』よりも、傷ついた子供の心理に寄り添った作品でもあった。

 

 レオとルミは非常に親密であるが周りはそれをすぐに恋愛関係と誤解されることで、レオのなかにある「自分は同性愛者ではない、女性のように弱くない」というホモフォビアミソジニーな気持ちを呼び覚ます。それに呼応するようにレミを突き放し、スポーツに取り組み、自分の弱音や本音を隠す禁欲を身に付け、男らしさを内面化していく。しかし本作はレミの母親に全てを打ち明けることでレオなりに子どもなりに内面化した男らしさと折り合いをつけるある種の救いを提示しラストを迎える。非常に辛い映画だが、ホモフォビアミソジニーの親密と少年がいかにして男らしさを身に付けていくのかを非常に丁寧に取り上げた映画だった。