午前十時の映画祭13『暗殺の森 4K』 (Il conformista) [1970年イタリア・フランス・西ドイツ]
過去の罪に捕われファシストにならざるを得なかった男の悲哀を描いた。幼い頃、自分を犯そうとした男を射殺してしまったマルチェッロは、いまだに罪の意識が消えずにいた。ある日、彼に反ファシズムのクアドリ教授暗殺の命が下る。監督はベルナルド・ベルドルッチ。出演はジャン=ルイ・トランティニヤ(マルチェロ)、ドミニク・サンダ(アンナ)、ピエール・クレマンティ(クアドリ)、ステファニア・サンドレッチ(ジュリア)ほか。
ファシズム化のイタリアで普通になりたい男の暴走を本当によく描いていると思う。同性愛への恐怖など、少しだけフォビアに見えるが、そもそもこの作品はホモフォビアそれ自体を描いているのだおる。また二人の女性に挟まれたりと、マルチェロは色んな二つ物に挟まれる。その追い込まれていく心理を表現する音楽と撮影は見事だ。
超有名なアンナとジュリアのタンゴのシーンは、あんな感じで出てくるんだなと。あのシーンもマルチェロのアンナとジュリアが同性愛関係に陥るのではないかと言うフォビアと渦巻く気持ちがダンスそのものに投影されていて見事。
多くの映画に影響を与えた映画なだけあって、全編に渡って撮影が凄い。ラストのクアドリ教授の森の中の暗殺シーンの、森の「ゴー」と音を立てて冷たい感じを出すのとか、部屋の中の奥行きのあるシーンとか、信じられないくらいだ。