@GB19940919’s diary

GB(https://twitter.com/GB19940919) (twitter→GB19940919)の映画感想雑記です。劇場で観た映画からWOWOWやサブスクで観た映画やドラマの感想です。

『緑の夜』

 

『緑の夜』 (Green Night) [2023年中国]

 

苦難に満ちた過去から逃れるために中国を離れ、韓国で抑圧された生活を送るジン・シャ。保安検査場での仕事中にミステリアスなオーラを放つ緑色の髪の女と知り合った彼女は、その出会いを本能的に危険だと感じながらも、ふとしたことから危険で非合法な闇の世界へと足を踏み入れていく。監督はハン・シュアイ。出演はファン・ビンビン(ジン・シャ)、イ・ジュヨン(緑の髪の女)ほか。

 

 上映前に性暴力が含まれるという警告あり。2重の意味でマイノリティのジンが予期せぬ出会いを経て、救世主を求めていたはずが自らが救世主になるまでの物語であった。そのために随所にキリスト教の十字架のイメージが差し込まれていたのは示唆的だった。

 

 明らかに『テルマ&ルイーズ』を意識していると思われるが、シンセみたいなスコアもハンス・ジマーを意識しているなと。ただ『テルマ&ルイーズ』のようなユーモアとかはなくずっとシリアスだ。

 

 「自由を得るために見えない何者かの許可を得る必要がある」と監督は語るが、そのジンが自由を得るために出てくる他の登場人物の描き方が悪い(ちなみにそれはジンをDVした夫のことではないです。彼は死んで当然です)。まずボウリング場の女子トイレで、そこに入ってきたトランスジェンダーだと思われる女性に向かってジンが「ここは女子トイレですよ」と強めに言ったと、その人から財布を盗んでホテルの鍵まで盗む。そのホテルで一夜を過ごして(セックスする)、ふとジンはその女性向かって「なんで女性になりたいのか?」ち呟く。女性同士の絆や恋愛を描くのに、まずトランスジェンダーを排除する必要ないし、ただでさえオンライン上ではトランスジェンダーへのヘイトが溢れているのに、監督はそういうことを気にしないんだろうな。その監督の無関心さは手話話者へも見られる。本作は中国語と韓国語を使って異なる者同士の交流を描いているのに、本作での手話は理解できない怖い言語としてしか登場しない。それも差別だ。

 

 一番悪いと思ったのが、緑の髪の女が死ぬラストだ。名前も与えられていない緑の髪の女がジンを誘惑して死ぬので、罰を受けて死んだように見えるので、普通に古臭い倫理観に捉われていると思った。全然新しくない。女性が自由を得るために、誰か別の女性を殺したり、罰したりする必要のない映画のほうが観たいな。