@GB19940919’s diary

GB(https://twitter.com/GB19940919) (twitter→GB19940919)の映画感想雑記です。劇場で観た映画からWOWOWやサブスクで観た映画やドラマの感想です。

『私たちの声』

 

『私たちの声』 (Tell It Like a Woman) [2022年イタリア・インド・アメリカ・日本]

 

世界各国の映画界で活躍する女性監督と女優が集結し、女性を主人公に描いた7本の短編で構成されるオムニバス映画。アメリカのタラジ・P・ヘンソンが監督を務め、ジェニファー・ハドソンがドラッグ依存と多重人格を克服しようと闘う女性を演じた「ペプシとキム」。アメリカのキャサリン・ハードウィック監督がマーシャ・ゲイ・ハーデンとカーラ・デルビーニュの共演で、コロナ禍のロサンゼルスで出会った医師とホームレスの交流を描く「無限の思いやり」。アルゼンチンのルシア・プエンソ監督がエバ・ロンゴリアを主演に迎え、亡き妹が遺した幼い娘との人生を考えるキャリアウーマンを描いた「帰郷」。日本の呉美保監督が杏とタッグを組み、育児と仕事に翻弄されるシングルマザーの多忙な日常をつづった「私の一週間」。イタリアのマリア・ソーレ・トニャッツィ監督がマルゲリータ・ブイがある女性患者のDV被害に気付く獣医を演じた「声なきサイン」。インドのリーナ・ヤーダヴ監督のジャクリーン・フェルナンデスがトランスジェンダー女性と交流する「シェアライド」。

イタリアのルチア・ブルゲローニ監督&シルビア・カロッビオ監督によるアニメーション作品「アリア」など。

 

 まず全体の感想として、オムニバス映画と銘打っているだけあって各作品が非常に簡潔にまとめあげられていて、もうちょっと長く観ていたいなと思うところで一作品が終わったりするので、正直なところ惜しい感じがある。また各国の女性を主人公にするということだが、現代というだけ以外は話の内容に共通点などはなく、監督たちが各々作りたかったものを作ったという感じで、散らかっている印象は否めない。またリアル志向の作品の中にファンタジーや物語要素がある作品が混ざり合っていて、映画の方向性をよく分からないものにしてしまっている。しかし同じ女性でも暮らしている場所で体験が違うのは当たり前で、この映画に抱く不満はインターセクショナリティを無視しているものでもあるのだろう。願わくは各国で各時代の女性たちの生活を縦の時系列でまとめあげたオムニバス作品を作って欲しいなと思う。

 

 個人的に好きだったのは、アルゼンチンの「帰郷」で、それこそ長編で観たかったな。最後は亡き妹の子どもとはどうなったのか気になったし、それこそ亡き妹が本当はどういう思いで生きていたのかももっと知りたかった。「アリア」もアニメーションで異質なのだが、内容がかなり今年公開された『バービー』に似ていて面白かった。またインドの「シェアライド」もクィア映画としてはあまり良くない描きかただが、もうちょっとトランスジェンダーとかクィアの人たちの描き方をかえて、長編で観たかったなと思う。

 

 逆に好きじゃなかったのは、自分たちの生活に一番近いからなのか、日本の「私の一週間」が一番観ていられなかった。母親が片親で子供二人を育てるのがどれだけ大変かをドキュメンタリー調で追っているような内容だが、もうただその大変な生活を追っているだけでそれ以外は特にない。リアルだと言えばリアルだが、物語性がない。この映画で唯一のしっかりとしたセリフがあるのが主人公の息子であるが、お母さんが忙しいのをよそにずっと「僕を観て」と母親にすがる姿は観ていていたたまれなくなった。しかもその息子に反して姉が少し大人びていて、その代わり母親から弟の世話を頼まれたりして、それをすっぽかすと母親から強く叱られてしまう。こういう姉はいるよな、いつも弟の世話を押し付けられて、すっぽかすと叱られる(これが兄だったら、あんなに怒られないんだよ)。そんな姉が親に内緒でお掃除ロボットのプレゼント抽選に応募して、それが当選して、これでお母さんに楽になると良いね、今まで姉につらく当たってごめんね、ってなんだよその脚本は。リアルたっちで描いていて、ラストがすごく物語っぽいというか、その物語もすごく陳腐で。家電のCMなら許されるだろうけど、こういうオムニバス映画で、日本を代表して選ばれた作品がこれってさ...