@GB19940919’s diary

GB(https://twitter.com/GB19940919) (twitter→GB19940919)の映画感想雑記です。劇場で観た映画からWOWOWやサブスクで観た映画やドラマの感想です。

『幻滅』

 

『幻滅』(Illusions perdues) [2021年フランス]

19世紀フランスの文豪オノレ・ド・バルザックの小説「幻滅 メディア戦記」を映画化。19世紀前半。フランスでは恐怖政治が終焉を迎え、宮廷貴族たちが自由と享楽的な生活を謳歌していた。詩人としての成功を夢見る田舎町の純朴な青年リュシアンは、貴族の人妻ルイーズとパリへ駆け落ちするが、世間知らずで無作法な彼は社交界で笑いものにされてしまう。生活のため新聞記者の仕事に就いた彼は、金のために魂を売る同僚たちに影響され、当初の目的を忘れて虚飾と快楽にまみれた世界へと堕落していく。

監督はグザビエ・ジャノリ。出演はバンジャマン・ヴォワサン(リュシアン)、バンサン・ラコスト(エティエンヌ)、グザビエ・ドラン(ナタン)、セシル・ドゥ・フランス(ルイーズ)ほか。

 

 田舎で生まれ成功を夢見るリュシアンが都会へ行き栄光盛衰を描いている作品で、少し上映時間が長いが、その分見終えた時の満足度とか疲労感はかなりある。私は『バリー・リンドン』『タイタニック』とか男性が身分を偽ったり上流階級へのし上がっていくいく姿が描かれる映画がすごく好きで、本作も私の趣味を上手くついてきた。

 

 リュシアンはかなり文才がある人間であるが、それ以上に他人を魅了させてしまう力を持っている人間である。そもそもこの時代の田舎の青年が出世するには文才より他人を魅了する力があるほうが出世できるだろう。それに一番魅了されているのがリュシアンの周りにいる女性たちだ。彼女たちはリュシアンの文才にも惚れているが、無一文になっても文才を発揮していない時期でも、決してリュシアンを見捨てることはしない。それは何よりリュシアンの人としての魅力に魅了されているからだ。(それが愛だと思うのだが) 男性にも愛嬌は必要であることをこの映画は教えてくれる。

 

 またこの映画は当時の芸術と批評とメディアの関係を嘘偽りなく描いている。(ああいう初演舞台を台無しにしてやろうみたいなこと本当にやっていたのだろうか。) 嘘も噂も報道されれば真実になる。このテーマは現在にも通じるだろう。19世紀を描いているが作品だが、現代の社会を風刺している作品でもある。