@GB19940919’s diary

GB(https://twitter.com/GB19940919) (twitter→GB19940919)の映画感想雑記です。劇場で観た映画からWOWOWやサブスクで観た映画やドラマの感想です。

『ウィッシュ』

 

『ウィッシュ』 (Wish) [2023年アメリカ]


どんな願いもかなうと言われているロサス王国。魔法を操り国を治めるマグニフィコ王は、国民から慕われているが、お城で働く17歳のアーシャは、ある秘密を知ってしまう。それは、人々の願いがかなうかどうかを王が決めていること、王は国のためになる願いだけをかなえており、国民が王を信じてささげた願いのほとんどはかなえられることがないということだった。王国の秘密を知ってしまったアーシャは、王を信じて託した人々の願いを救いたいと、夜空の星に祈る。すると、空から魔法の力をもった願い星のスターが舞い降りてくる。スターの魔法によって話すことができるようになった子ヤギのバレンティノやスターとともに、アーシャはみんなの願いのために奮闘する。監督はクリス・バック、ファウン・ビーラスンソーン。脚本はジェニファー・リー。音楽はジュリア・マイケルズ。出演はアリアナ・デボーズ(アーシャ)、クリス・パイン(マグニフィコ)、バレンティノ(アラン・テュディック)ほか。

 

 まずアニメーションの質が落ちたというか、おそらく背景は昔のディズニーアニメーションらしくセル画のような感じで、逆にキャラクターはCGアニメーションで、それを融合したのが本作のアニメーションの特徴だ。しかしその融合が全くいきていない。なんなら安っぽい感じすらした。100周年をお祝いする映画のアニメーションがこれで本当に良いのか?またキャラクターのアニメーションも違和感ありまくりで、特にセリフの無い平民や兵士のアニメーションが変だったというか、「その顔、『シュレック』に出てくる人間のアニメーション?」と思うくらいだ。別に『シュレック』をつまらないと言っているわけでなく、なんなら『シュレック』の方がディズニーのパロディでそれにさらに面白さを足した最高の映画なのだが、そのパロディより質が落ちているのが『ウィッシュ』だ...

 

 またせっかくのディズニーの新作なのに、主人公のアーシャが王国を出たり冒険したりしない。ずっと王国の中にいて、それがつまらなかった。ディズニーと言えば冒険じゃん!って感じである。エキゾチシズムでもステレオタイプでも何でもいいから冒険して欲しかった。この地元を愛するマイルドヤンキーみたいなストーリー展開が最高に退屈だった。星に願うくらいなら冒険しろっ!というか、この映画に出てくるアーシャとその友達たちはみんな優しくて、地元志向の現代の若者みたいでリアルと言えばリアルなのだが、映画なんだからもっと派手に生きて欲しかった。何回も言うけどディズニーのアニメ映画がこんな貧乏くさいことしなくていいよ。

 

 アーシャも亡くなった父との思い出を大切にしたり、祖父を心から慕っている良い娘なんだけど、これはおそらく過去のディズニーのヒロインのオマージュだろう。アーシャの場合は母親が生きているのだが、ディズニーのヒロインは男性の家族を大切にしてその絆が批判されるのだが、正直アーシャもその古いヒロイン像を引き継いでいる感じは否めない。というか本作は女性より男性のキャラクターの方が印象に残る。まずアーシャの相棒のオス羊であるバレンティノは星から喋る魔法を貰ってからというもの凄くチャーミングだ。また悪役のマグニフィコ王は魅力的でヴィランなのに持ち歌が2曲もある好待遇ぶりで、付けて取ったような王妃の反乱もあるけど、そんなの霞むくらいマグニフィコ王の方が魅力的だ。そうなると映画を観終わった後のアーシャのイメージは男性キャラクターとよく喋り、対峙していた印象しか残らない。こんな古臭いディズニーのヒロインが100周年をお祝いしたアニメ映画の主役でいいのか?

 

 他にも不満はたくさんあるけど、一番許せないのが革命を描いていると思っていることだ。本作はマグニフィコ王の不正と闘うため市民が立ち上がるのだが(アーシャとその友達たち曰く"革命"なのだそう)、まずディズニーのくせに革命なんて大それたこと口にすんじゃないと素直に思ってしまった。この"なんちゃって革命"が一番許せなかった。「歌は良かったかな」なんて一瞬でも思うんだけど、歌が良いのはディズニーアニメーションにとって"当たり前"なんだから、あえてそこを褒める気にもなれない。

 

 まあとにかくオリジナリティの無い作品で驚いた。ディズニーのレガシーを強化したいがために作られた作品だと思う。SNSで「ChatGPTに作ってもらった作品」と言っている人がいたが、本当にそんな作品だ。過去作のオマージュがかえって裏目に出ているというか、だったら『魔法にかけられて』を観たほうが何倍も良い。