@GB19940919’s diary

GB(https://twitter.com/GB19940919) (twitter→GB19940919)の映画感想雑記です。劇場で観た映画からWOWOWやサブスクで観た映画やドラマの感想です。

『ナポレオン』

 

『ナポレオン』 (Napoleon) [2023年アメリカ]


18世紀末、革命の混乱に揺れるフランス。若き軍人ナポレオンは目覚ましい活躍を見せ、軍の総司令官に任命される。ナポレオンは夫を亡くした女性ジョゼフィーヌと恋に落ち結婚するが、ナポレオンの溺愛ぶりとは裏腹に奔放なジョゼフィーヌは他の男とも関係を持ち、いつしか夫婦関係は奇妙にねじ曲がっていく。その一方で英雄としてのナポレオンは快進撃を続け、クーデターを成功させて第一統領に就任、そしてついにフランス帝国の皇帝にまで上り詰める。政治家・軍人のトップに立ったナポレオンと、皇后となり優雅な生活を送るジョゼフィーヌだったが、2人の心は満たされないままだった。やがてナポレオンは戦争にのめり込み、凄惨な侵略と征服を繰り返すようになる。監督はリドリー・スコット。出演はホアキン・フェニックスナポレオン・ボナパルト)、バネッサ・カービー(ジョセフィーヌ)ほか。

 

 さすがリドリー・スコット言わんばかりの撮影で観ていて非常に豪華である。戦闘シーンもすごくリアルだと思う。レビューで指摘されているように確かに史実には正確ではないが、本作では意図的にはそうしているように見える(監督がどれだけ歴史研究家にイラつこうが、歴史研究者から史実とは違うと指摘されたら素直に認めればいいのにと思う)。ナポレオンがいかにしてのし上がり没落していったのかを描いているが、あまりナポレオンに感情移入せず一歩引いたところからナポレオンを描いているのが本作の特徴だ。そのためナポレオンがどれくらい凄かったのかは分かりにくい気がした。

 

 この映画のナポレオンはとにかくジョセフィーヌに心酔しており、いつでも彼女のことを思っており、別れてからもずっとジョセフィーヌへの思いを手紙にだけしたためて、それを観客にだけ提示される作りである。そんなジョセフィーヌへの思いと並行してナポレオンの侵略が描かれるが、ジョセフィーヌが嫌な女性のように見えることは一切なく、とても気を使って描かれていた。逆に言えば、ナポレオンにもジョセフィーヌにも、そして民衆にすら一歩下がって描いているため、この映画は一体誰の何のための映画で、何を描いているのか全く分からなくなってしまっていた。

 

 実はナポレオンとジョセフィーヌの夫婦の年齢差は10歳ほどジョセフィーヌのほうが年上だったらしいのだが、本作では明らかにナポレオンの方が年上に見えるし、もちろん役者の年齢もバネッサ・カービーよりホワキン・フェニックスのほうが年上だ。もともとバネッサ・カービーではなくジョディ・カマーが演じる予定だったらしいが、それでもホワキンの方が年上なのはかわらない訳だ(念のため言うと、役者に対して文句を言っているわけではない)。そもそもあの時代に権力者が年上の子持ちの女性と結婚している時点でとても意味のある夫婦になるのに、この映画からはその夫婦の年齢差に重きを置いているようには見えなかった。ナポレオンとジョセフィーヌの関係に焦点を当てている映画なら、夫婦の年齢差に焦点を当てるべきだったかもしれない。

 

 あとこの映画で何度か差し込まれるナポレオンとジョセフィーヌの犬の交尾みたいなセックスシーンはおそらくこの映画で笑えるところなんだけど、ああいう体位でのセックスシーンで男性だけ絶頂の声を出して女性は冷めているみたいな描き方だけで、この男女の関係性が見えて面白いし、しっかりセックスシーンに意味を持たせているなと思う一方で、本当に『最後の決闘裁判』を撮った人とは思えない、あの映画で非難していたようなことをこの映画は描いてしまっているような気もして、さすが作家性が無いリドリー・スコットだなと思った。