@GB19940919’s diary

GB(https://twitter.com/GB19940919) (twitter→GB19940919)の映画感想雑記です。劇場で観た映画からWOWOWやサブスクで観た映画やドラマの感想です。

『不都合な理想の夫婦』

 

『不都合な理想の夫婦』(The Nest)

 

一見すると理想的だが虚飾と野心に満ちた夫婦が崩壊していく様を描いた心理スリラー。1986年。ニューヨークで貿易商を営むイギリス人のローリーは、アメリカ人の妻アリソンと息子と娘と4人で幸せに暮らしていた。ローリーは大金を稼ぐ夢を追い、好景気に沸くロンドンへ家族とともに移住する。かつての上司が経営する商社で働くことになったローリーは、仕事では周囲から高く評価され、プライベートではロンドン郊外に豪邸を借り、息子を名門校に編入させ、妻には広大な敷地を用意するなど、まるでアメリカンドリームを体現した勝者の凱旋のようだった。しかし、ある日、アリソンは敷地内の馬小屋の工事が進んでいないことに気付く。業者に問い合わせると、支払いが滞っているという。さらに驚くべきことに、新生活のために用意していた貯金が底を突いていることを知ってしまう。

 

 予告観た時はあんまり期待できないなとかなりハードルを下げて鑑賞したのを公開するくらい面白かった。最初から崩壊していた夫婦と家族と巣(Nest)の綻びみえてくるストーリー展開でそれがどんどん観客に提示されていく様がすごく怖くて嫌だけどものすごく面白い。また画面がずっと不穏で薄い自然光が登場人物の特にローリーの軽薄さを表現しているのが良い。また映画全体を覆っている不穏な音楽も良い演出だ。たぶんこの監督はどんな映画を作っても上手に撮ると思う。またこの映画は登場人物を遠くから撮るシーンが何回かあって、舞台がイギリスということもありスタンリー・キューブリックから影響を受けているのではないか?そういえばこの映画はローリーが狂気に襲われて家族を物理的に襲わない『シャイニング』みたいな映画ではあるなと思う。またイギリス版『ウルフ・オブ・ウォールストリート』でもある。

 

 私はローリーの嘘をつきまくったり破滅的な人生を辿ってしまう(たぶんこれが俗にいうサイコパスだ)のに少し共感してしまうし、アリソンの人を支配したいという欲求も少し共感してしまった。まああまり良くないのだが。ラストで子ども達(子供たちも自暴自棄になったりして、特に長女はタバコ吸ったりラりったりするんだけど、このくらいの子どもにしては平均的な行動だと思う)が親を置いておいて普通の生活をするために朝ごはんを作るんだけど、そういえばこの家族は一家で団欒をとるシーンが全く無かったよな。家(The Nestという原題は引っ越ししてきた大きな家のことだ)も大きくなって、もともと団欒が喪失していた家族が余計団欒が喪失していった。そして皮肉にもラストに団欒をとるシーンを差し込んで映画が終わったのも示唆的だ。