@GB19940919’s diary

GB(https://twitter.com/GB19940919) (twitter→GB19940919)の映画感想雑記です。劇場で観た映画からWOWOWやサブスクで観た映画やドラマの感想です。

『シチリア・サマー』

 

シチリア・サマー』 (Stranizza d'Amuri) [2022年イタリア]

 

1982年、初夏のシチリア島。16歳のニーノと17歳のジャンニは、バイク同士の衝突事故をきっかけに運命的な出会いを果たす。育った環境も性格もまったく異なる彼らはひかれあい、友情は激しい恋へと変化していく。かけがえのない時間を過ごす2人だったが、彼らのまぶしすぎる恋はある日突然の終わりを迎える。監督はジュゼッペ・フィオレッロ。出演はガブリエーレ・ピッツーロ(ニーノ)、サムエーレ・セグレート(ジャンニ)ほか。

 

 ニーノとジャンニが選択した結果が結果なだけに観終わった後大変ショックを受ける映画であった。今年は『CLOSE/クロース』に続き公開されるクィアフィルムの登場人物たちの多くが自死を選んでいるので、国内配給する映画配給会社側の死を選ぶ美しいクィアフィルムをあえて推しているのではないかと疑いたくなるレベルである。もっと辛いのが『シチリア・サマー』のニーノとジャンニは実際に存在した人間であり、この自殺が82年に実際にイタリアで起きたという事実である。

 

 映画自体は少しニーノとジャンニの恋愛を美しく撮ってあるので途中までは恋愛映画のように見えるし、シチリア島の中で鬱屈して生きていくクィアの青年の成長物語のようにも見える。そのためシチリア島に暮らすニーノやジャンニ以外の人々の暮らしや生活も良く分かる。ただし女性の描き方は悪く、特にニーノとジャンニの母親たちは二人を心配するがあまりにホモフォビアになり二人の恋愛と人生を破壊しているように見える聖母である。この破壊する聖母のイメージは、映画の中でも上手に表現されていて、ニーノの母親がニーノとジャンニが付き合ってるのではないかと疑うシーンがニーノの母親の不安そうな表情と後ろに飾ってある聖母の絵が連動しているように見えた。

 

 映画の途中でニーノとジャンニが聖セバスティアヌスと讃える祭りに遭遇するシーンがあるのだが、よくよく考えればこの映画はニーノとジャンニが1982年のイタリアにおいて聖セバスティアヌスになる話だ。聖セバスティアヌスは初期のゲイ・アイコンであると言われていて、まさに愛のために死んだ(殉教)ニーノとジャンニのような人物だ。それを知ってか知らずかシチリア島の祭りはゲイ・アイコンである聖セバスティアヌスを讃えているのだ、きっとこの映画はその二枚舌的な"自分たちが差別しているはずの人間を実は自分たちは讃えているのだ"という事実を皮肉るために入れたシーンなのだろう。