@GB19940919’s diary

GB(https://twitter.com/GB19940919) (twitter→GB19940919)の映画感想雑記です。劇場で観た映画からWOWOWやサブスクで観た映画やドラマの感想です。

『無名』

 

『無名』 (Hidden Blade) [2023年中国]

 

中国・汪兆銘政権の政治保衛部に所属するフーは、中国共産党の秘密工作員だった男ジャンの身辺調査を行う。フーは中国国民党に転向するというジャンから共産党幹部の情報を聞き出すことに成功する。1941年、上海に駐在する日本軍スパイのトップ・渡部は、政治保衛部の主任となったフーやその上司タンと日本料理店で戦局について話す。フーの部下として働くイエは、友人ワンとともに諜報活動に従事していたが……。監督はチェン・アル。出演はトニー・レオン(フー)、ワン・イーボー(イエ)、ジョウ・シュン(チェン)、森博之(渡辺)ほか。

 

 まず美術とか撮影がかなりスタイリッシュで常にスリリングな雰囲気で観ていて全く退屈しない。映画の進み方もオシャレで、1つの場面をまず初めに提示し物語が進行していくにつれてその提示した場面の伏線と説明を回収していくという流れを何回も繰り返していくというやり方をとっていた。オシャレだが正直言って観ていて疲れる。ただ隅々までこだわった映画だということは伝わってくる。多少は難しい映画だと思うのだが、歴史的な背景は別としてノワールスリラーとして楽しめると思う。

 

 あと言葉にも非常に気を使っていて、中国語だけじゃなくて日本語にもたいへん気を使っている。途中日本兵の集団が出てくるのだが、その日本兵が標準語を喋っている人もいれば、訛っていて地方の言葉を喋っている人もいて、宗主国の描き方がたいへん細かくて感心してしまった(まあ日本による植民地支配を描いた内容ゆえ感心しすぎるのは良くないのですが)。またこの宗主国へのこだわり描写が登場人物たちの態度の違いにも出ていて、フーは日本語が分かるが日本語を喋ることや日本食を食べることを避けることで宗主国に反対していると共に中国共産党への忠誠心を表していた。一方でイエは日本語を積極的に喋り、日本食もたしなんでいた。これが渡辺への忠誠心に繋がっている(本当はイエも共産党員だったのですが)。

 

 途中日本人として背筋が凍るシーンがあるのだが、『オッペンハイマー』ばかりに怒ってないで、こういう映画も観ないとなと思う。あとこれは日本配給へのお願いだが、全ての台詞に日本語字幕つけて欲しい。ラストのイエが渡辺に言った捨て台詞が全く聞き取れなかった...私にも問題あるかもだけど、中国語(?)と日本語が常に飛び交うシーンが多く、情報処理が忙しいかったので、だったら全部字幕付けてくれた方がかえって観やすかった。