@GB19940919’s diary

GB(https://twitter.com/GB19940919) (twitter→GB19940919)の映画感想雑記です。劇場で観た映画からWOWOWやサブスクで観た映画やドラマの感想です。

『PIGGY ピギー』

 

『PIGGY ピギー』 (Piggy) [2022年スペイン]


スペインの田舎町で暮らす10代の少女サラは、クラスメイトから執拗ないじめを受けていた。ある日、あまりの暑さに耐えきれず1人で地元のプールへ出かけた彼女は、そこで怪しげな男と、3人のいじめっ子たちに遭遇する。その帰り道、サラは血まみれになったいじめっ子たちが男の車で拉致されるところを目撃。警察や親に真実を打ち明けて捜査に協力するべきか、それとも沈黙を貫いて自分を守るべきか、決断を迫られるが……。監督&脚本はカルロタ・ペレダ。出演はラウラ・ガラン(サラ)ほか。

 

 監督自身が2018年に制作した短編映画「Cerdita」を長編映画化したものらしい。全体的に十代の夏を切り取った成長物語のようでかつスラッシュ系のホラー映画のような複数のジャンルを上手く融合させた作品だ。またこれはRide or Dieみたいな"自分のことを救ってくれた、もしくは好きになった男性が実はヤンキーだった"的な恋愛映画の変換で、好きになった男が大量殺人鬼だったっていう話だ。そこがかなり面白くて、途中までは本当にサラは殺人鬼の男と逃避行するのだ。しかしサラはもともと勇敢な人間で最後は自分の中の善が勝ち、好きになった男を振り切り、同級生の女子たちを救助するという選択を自らの意思でする。ここまでの見せ方が非常に面白いし、サラの複雑な葛藤が伝わってくるのが良かった。

 

 サラはおそらく友達もいないし、自分の性格や容姿にかなりコンプレックスを持っているし(男性用に作られたポルノを鑑賞していたりと)、母親からも疎まれているし、いわゆる社会関係資本が著しく不足している女の子だ(おそらくインポスター症候群みたいなところがある)。私もサラと同じく社会関係資本がすごく少ないんだけど、そういう人ってたまにとんでもない失敗をしでかすのだけど、それに気づいていないことが多い(自らを省みながら...)。友達なり家族に何か話せる人はそのコミュニケーション能力から周りから「それ、危なくない?それはこうしたほうがいいかもしれない」などのアドバイスをもらえたり、そこから自分で解決する能力がすごく高かったりするのだけど、この映画のサラはまずその危険を知らせてくれる人がいない(私もだ)。この映画のシチュエーションだと「その男、絶対危ないから付き合うのはやめたほうがいい」である。その危険性を知らせてくれる友達がいないから、サラに突然現れたあの白いバンに乗った大量殺人鬼の男は"白馬に乗った王子様"に見えるんだよ。でもこの映画ではしっかりそんなサラに警告をはっし、自分で切り抜ける選択を与えたのはすごく誠実だ。

 

 人間関係って自分が異常ではないか、どれくらい普通なのかを気付かせる役目があると思うんだけど(良いこともありけど悪いこともある)、この映画はサラが自分が異常ではなく普通で、その普通が問題解決能力を身に付けたのだと自覚させる。すごく我が身をつまされる映画だった。