@GB19940919’s diary

GB(https://twitter.com/GB19940919) (twitter→GB19940919)の映画感想雑記です。劇場で観た映画からWOWOWやサブスクで観た映画やドラマの感想です。

『別れる決心』

 

『別れる決心』(Decision To Leave)

 

男性が山頂から転落死する事件が発生。事故ではなく殺人の可能性が高いと考える刑事ヘジュンは、被害者の妻であるミステリアスな女性ソレを疑うが、彼女にはアリバイがあった。取り調べを進めるうちに、いつしかヘジュンはソレにひかれ、ソレもまたヘジュンに特別な感情を抱くように。やがて捜査の糸口が見つかり、事件は解決したかに見えたが……。

監督はパク・チャヌク。出演はパク・ヘイル(ヘジュン)、タン・ウェイ(ソレ)。
2022年、韓国製作。上映時間は138分。言語は韓国語、マンダリン。レイティングはG。日本配給はハピネットファントム・スタジオ。

 

 まずパク・チャヌク監督の細部に至るまでのこだわりが凄い。美術や撮影や音楽はもちろんのこと、なんともないようなシーンですら何かあるのではないかと画面を凝視してしまうので、かなり引き込まれる映画だが同時に観終わった時の疲労感がかなりある。

 

 話の内容はかなりアルフレッド・ヒッチコック監督の『めまい』に似ているのだが、あれのアンチテーゼみたいな作品になっているのが面白い。(パク・チャヌク監督は『めまい』を観たことが無いと答えていたそうだが、たぶん嘘だと思う笑) 『めまい』は非常に男性中心的な目線の映画で主人公の男性が明らかにヴィランみたいなキャラクターなのに、映画ではそこに焦点が当たっていない。今観返すとジェームズ・スチュアート演じる『めまい』の主人公は明らかに一人の女性を死に追いやった悪い自分勝手な男だ。その『めまい』を観返したときの発見が『別れる決心』を観る時に必要な視点だと思う。

 

 ソレを一方的に観察し恋心と見下す心を両方持ったヘジュンはこの映画の悪役でありファムファタルの男性版だ。『別れる決心』は伝統的なファムファタル映画の形態を取りながら、実はファムファタルは男性のヘジュンだったとう伝統にひねりを加えた面白い映画だ。

 

 スマフォなどのハイテク機器を使いながらも、海と山、見る人と見られる人、愛煙家と嫌煙家、ケアされる人とケアされる人、ケアしたい人とケアされたい人、韓国語とマンダリン、持っている人と持たざる人、等々を対称的に描くのが本当に見事だ。

 

 ここで私が語るよりも素晴らしい批評や考察などがネットにあるので、詳しくは書かないが非常に繊細で緻密で面白い映画だ。このサイトにこの映画の細かい点をまとめた記事があるのだが、これを読んでも本当に細かい映画なんだとため息が出る。