@GB19940919’s diary

GB(https://twitter.com/GB19940919) (twitter→GB19940919)の映画感想雑記です。劇場で観た映画からWOWOWやサブスクで観た映画やドラマの感想です。

『聖地には蜘蛛が巣を張る』

 

『聖地には蜘蛛が巣を張る』(Holy Sider) [2022年/デンマーク・ドイツ・スウェーデン・フランス]

2000年代初頭。イランの聖地マシュハドで、娼婦を標的にした連続殺人事件が発生した。「スパイダー・キラー」と呼ばれる殺人者は「街を浄化する」という声明のもと犯行を繰り返し、住民たちは震撼するが、一部の人々はそんな犯人を英雄視する。真相を追う女性ジャーナリストのラヒミは、事件を覆い隠そうとする不穏な圧力にさらされながらも、危険を顧みず取材にのめり込んでいく。そして遂に犯人の正体にたどりついた彼女は、家族と暮らす平凡な男の心に潜んだ狂気を目の当たりにする。

監督はアリ・アッバシ。出演はザーラ・アミール・エブラヒミ(ラヒミ)、メフディ・バジェスタニ(サイード)ほか。

 

 イランで起きた実際の事件を元に映画化したそう。イランでは製作できず出資元はヨーロッパ諸国で撮影自体もモロッコで行ったそうだ。映画の冒頭から殺人事件の犯人であるサイードの存在が明確に提示され、映画はサイードを追うラヒミと殺人をし続けるサイードを同時進行で描写していく。サイードが捕まった後は、サイードの過激な主張に共感していく宗教の教えがより強く残る家父長社会と男性たちとそれを内面化する女性たちに焦点が当たる。またその社会の影響が継承的な存在である純粋無垢な子供たちに浸透するのだということを暗示し映画は終わる。

 

 実際の事件をモデルにしているだけあって、とても残酷であり殺人の内容もより詳細に描かれている。そのためかなり煽情的な映画でもある。娼婦殺人をモデルにしているにも関わらず、殺人事件だけでなく娼婦が実際に買い手にサービスを提供しているシーン(あえてこの表現をしています)も映画の冒頭に映すので、ちょっと観ているのは辛い。しかもその女性がまもなくすぐにサイードに殺されてしまう。その後もサイードが女性たちを殺すシーンを数回に及び入れることで映画にダークなトーンを落とし込んでいるので、ハラハラするが同時に映画表現の暴力性みたいなものも感じた。私は映画のことを愛しているが、こういう映画の暴力的な側面は嫌いだ。せめてレイティングがしっかりなされていて、この映画を観て現実社会のミソジニーや家父長的な社会へ批判の目が向かれるのが唯一の救いだ。