『ドラキュラ デメテル号最期の航海』 (The Last Voyage of the Demeter) [2023年アメリカ]
ルーマニアのカルパチア地方からイギリスのロンドンまで、謎めいた50個の無記名の木箱を運ぶためチャーターされた帆船デメテル号は、その航海の途上で毎夜、不可解な出来事に遭遇する。デメテル号船長の航海日誌に記されたおよそ1カ月におよぶ無慈悲な存在との対峙の記録をもとに、大海原をわたるデメテル号に何が起こったのか、そして謎に包まれた50個の木箱の中身をめぐる恐怖の物語が展開する。監督はアンドレ・ウーブレダル。出演はコーリー・ホーキンズ(クレメンス)、アシェリン・フランシオーシ(アナ)、デビッド・ダストマルチャン(ヴォイチェク)、リーアム・カニンガム(エリオット)、ウッディ・ノーマン(トビー)ほか。
船という逃げ場のない空間で次々に人間がドラキュラに殺される、そしてそれが怖いみたいな製作側が見せたいものはしっかりと見せることができていたと思う。そこは満足である。つまらなくもない。
しかしアナが登場してからの展開があまり良くない。ドラキュラという存在を知らない船員たちとドラキュラという存在を知っているアナとの温度差が最後まで埋まらず、ケミストリーみたいなものも全く生まれていない。そのせいで最後のドラキュラとの闘いもクレメンス以外が全員死んでしまう前後に起こるドラマが全く上手く作用してなかった。それに映画の冒頭でナレーションではあるが、登場人物たちが全員死んだことを示唆するのはスリラー要素を無くしてしまういらない設定だった。
正直ドラキュラの存在を知っているアナを登場させないで、ドラキュラという謎の存在と船員が対峙する映画にすれば面白くなったのではなかろうか。その前にこれは映画の存在自体を否定してしまう意見だが、そもそもルーマニアの村でドラキュラと対決するアナの映画が観たいんだよね、どっちかと言うと。アナのセリフで言っていたことをそのまま実際に映画として観たいの。