@GB19940919’s diary

GB(https://twitter.com/GB19940919) (twitter→GB19940919)の映画感想雑記です。劇場で観た映画からWOWOWやサブスクで観た映画やドラマの感想です。

『インスペクション ここで生きる』

 

『インスペクション ここで生きる』 (The Inspection) [2022年アメリカ]

 

イラク戦争が長期化していた2005年のアメリカ。ゲイの青年エリス・フレンチは母に見捨てられ、16歳から10年間にわたってホームレスとして生きてきた。自身の存在意義を求めて海兵隊に志願入隊したものの、教官から強烈なしごきを受け、さらにゲイであることが周囲に知れ渡ると激しい差別にさらされてしまう。何度も心が折れそうになりながらも、暴力と憎悪に毅然と立ち向かうフレンチ。孤立を恐れず、同時に決して他者を見限らない彼の姿勢は、周囲の人々の意識を徐々に変化させていく。

 

 いくら私が大好きなA24でも嫌いな題材を扱った作品は普通に嫌いだ。アメリカ海軍のプロパガンダだったし、現役海兵による。というかA24って保守的な会社だよね、ただ製作者や配給する作品に多様性があるだけって感じ。そこが新しくて革新的なのは分かる。それに日本公開に伴いしっかりとゲイであることを隠さないで広告をうっているのも好感が持てる。それに非白人でゲイであることの映画なんて日本でそうそう観ることもできないので、ここだけでもA24とハピネットファントム・スタジオは評価できる。(合併前のファントム・スタジオって確か過去にも『ムーンライト』『キャロル』『お嬢さん』を日本配給しているので積極的にクィア映画を公開しようと努力している)

 

 主人公がシャワールームで妄想して勃起するシーンとか、上官とセックスをするシーンとか、妄想なのか夢なのか差があまり感じられず、今の主人公の夢なのか妄想なのかもう少し区別して描くべきだった。あと映画ではゲイとして充足されないのに、やたら女性のヌードシーンとかポルノを観て興奮するシーンとかマスタターベーションするのも観ていて不快だったんだけど、これは私の感じ方の問題かもしれない、とにかく肌に合わなかった。観客を不快にさせるのも目的なのだろうけど、本気で大好きなA24と距離取ろうと思ったし、1つのスタジオに入れ込むのも良くないのでちょうどいい機会だし、距離を取ろうと思った。たぶん新人のいびりも意図的に『フルメタル・ジャケット』を意識していると思うけど、海外の批評で本作をゲイ・フルメタル・ジャケットと評されていた、新平が上官を銃で殺すシーンンを入れたキューブリックのほうが優れているし、人間が描けていると思う。いつも人間が描けていないと言われるキューブリックだけど、ちょう人間が描けているだろうと思う。本作では上官はラストではヒーローみたいになっているし、まあたぶんこの映画は人間ではなく、海兵を描きたかったのだろうね。というか海兵しか描けないのだろう。

 

 母親に認めてほしかった監督の気持ちは軽視したくないし、日本人が父親が不在がちで母子が密着しがちのアメリカ黒人家庭を批判したくないが、でもそれでも主人公の認めて欲しい思いと母親への愛憎を描くには色々足りない気もした。それを足しても引いても悪い映画だと思うし、観客の存在を忘れた個人的な映画だと思う。