『イノセンツ』 (De uskyldige) [2021年ノルウェー・デンマーク・フィンランド・スウェーデン]
ノルウェー郊外の住宅団地。夏休みに友人同士になった4人の子どもたちが、親たちの目の届かないところで隠れた力に目覚める。子どもたちは近所の庭や遊び場で新しい力を試すが、やがてその無邪気な遊びが影を落とし、奇妙なことが起こりはじめる。監督は&脚本はエスキル・フォクト。
日本の『童夢』から影響を受けているそうですが(私はその作品を知らない)、私は『X-MEN』っぽいなとも思っていたが、子どもがメインのお話で親がいてもほとんど不在なのも日本の漫画っぽいなとは思う。特に住んでいる子どもたちの背景を詳しく描かずに共通の能力で会話し理解し合う(ラストは分裂する)のも漫画っぽい。監督が脚本を手掛けた『テルマ』でも同じ作風でほぼ同じ話なんだけど(恋愛はしない)、この監督の作家性だろうね。
しかし『わたしは最悪。』でも思ったのだが、この人は結構倫理観みたいなものが欠けていて、本作ではその欠けている倫理観が人種に表れていた。メインの子供4人の内、イーダ、アナは白人で、アイシャとベンは非白人なんだけど、主人公姉妹のイーダとアナは白人でかつ両親とも健在だ。アイシャとベンは父親が不在でかつ母親一人で育てていて、おそらく移民だ。その親も移民として苦労して、結果的に悲惨な目にあって、アイシャもベンも死んでしまう。最終的に生き残るのは移民が多く集まるあの団地では最近まで他人だった白人の家族だけなんだよ、それってかなり問題あるし、移民を他者化してるよね。それに障害=能力で解決っていうのもどうなんだ。
ただしきょうだいでどちらかが障害児だとどうしても親の愛情やリソースが偏ってしまい、片方が不満を持つというのはすごくあり触れていると思うし、そこを扱ったのは良かった。それに初めからイーダは親の愛情と関心が欲しかったわけだし、それをしっかり気づかせて充足するラストで良かった。