@GB19940919’s diary

GB(https://twitter.com/GB19940919) (twitter→GB19940919)の映画感想雑記です。劇場で観た映画からWOWOWやサブスクで観た映画やドラマの感想です。

『VESPER/ヴェスパー』

 

『VESPER/ヴェスパー』 (Vesper) [2022年ベルギー・フランス・リトアニア]


生態系が壊れてしまった地球では、一部の富裕層のみが城塞都市シタデルに暮らし、貧しい人々は危険な外の世界でわずかな資源を奪い合いながら生きていた。外の世界で寝たきりの父と暮らす13歳の少女ヴェスパーは、ある日、森の中で倒れている女性カメリアを見つける。シタデルの権力者の娘だという彼女は、墜落した飛行艇に一緒に乗っていた父を捜してほしいという。うまくいけばシタデルへの道を切り拓けるかもしれないと考えたヴェスパーは、父の制止を振り切ってカメリアの頼みを引き受けることに。しかし地域を支配する残忍なヴェスパーの叔父ヨナスもまた、墜落した飛行艇の行方を追っていた。監督はクリスティーナ・ブオジーテ&ブルーノ・サンペル。出演はラフィエラ・チャップマン(ヴェスパー)、ロージー・マキューアン(カメリア)、エディ・マーサン(ヨナス)ほか。

 

 全編英語だけど、実は製作に英語圏が関わっていないというのは面白いなと。確かにアメリカ的なSFとは少し系統が違うような感じがある。SF映画らしくけっこう視覚効果を使っているけど、自然と視覚効果を上手に融合していて、『ザ・クリエイター 創造者』に演出としては近い。

 

 あとものすごくかいつまんで本作を紹介すると「ナウシカのところにシータが落っこちてきた」話だ。本作の場合のナウシカはヴェスパーで、シータはカメリアだ。ヴェスパーが種の研究をして、内緒の研究室を持っているあたりとか、かなりナウシカっぽい。厳密にいうと『デューン 砂の惑星』の影響だろうけど。シータ的な人物のカメリアが自分がやってきたシダテルを破壊に行こうと決意する最後はさながらラピュタを滅びの呪文で滅ぼそうとするシータだ。

 

 人類存続の種の研究を成功させたヴェスパーがラストに塔に上って、シダテルを目指すのではなく自分たちが今まで住んでいた汚染された土地を見下ろして、ここで生きていくしかない、ここを変えていくしかないと決意するシーンは凄く意味のあるしモダンな視点だと思う。宇宙やユートピアに理想を感じない気候変動を直面している世代の価値観を凄く反映している(そもそもヴェスパーは明らかに所謂Z世代だ)。今まで見上げていたヴェスパーが今度は見下ろすというモチーフもの使い方も上手い。

 

 個人的には凄く好きなタイプなSF映画だったが、全体的に暗い話だしアクションの撮り方もヘタだと思った。それにもう少しカメリアがシダテルで反論を起こすシーンを入れて欲しかった。ただ本作は凄くシスターフッドというか、メインの登場人物がほとんど女性たちなのは良かった。