@GB19940919’s diary

GB(https://twitter.com/GB19940919) (twitter→GB19940919)の映画感想雑記です。劇場で観た映画からWOWOWやサブスクで観た映画やドラマの感想です。

『ぼくたちの哲学教室』

 

『ぼくたちの哲学教室』(Young Plato) [2021年アイルランド・イギリス・ベルギー・フランス合作]

 

北アイルランドベルファストの男子小学校で実施されている哲学の授業を2年間にわたって記録したドキュメンタリー。北アイルランド紛争によりプロテスタントカトリックの対立が繰り返されてきたベルファストの街には、現在も「平和の壁」と呼ばれる分離壁が存在する。労働者階級の住宅街に闘争の傷跡が残るアードイン地区のホーリークロス男子小学校では「哲学」が主要科目となっており、「どんな意見にも価値がある」と話すケビン・マカリービー校長の教えのもと、子どもたちは異なる立場の意見に耳を傾けながら自らの思考を整理し、言葉にしていく。宗教的、政治的対立の記憶と分断が残るこの街で、哲学的思考と対話による問題解決を探るケビン校長の挑戦を追う。監督はナーサ・ニ・キアナンとデクラン・マッグラ。

 

 アイルランドの教育制度が詳しく分からないので何とも言えないのだが、ドキュメンタリーに出てくる男の子たちはみんな、日本で言う初等教育の低学年1~2年生あたりかな。映画内でコロナ禍になるくだりがあるのだが、ということはこのドキュメンタリーは2年間も撮影していたのかと思いかなり時間の経過を感じた。というか2年間も学校に密着するドキュメンタリーって珍しいのではないか。よくぞ公開までこぎつけたねと感慨深い気持ちになった。それだけ高評価になってしまうが、全体的には非常に面白いドキュメンタリーだった(ドキュメンタリーに限らずこの数年の映画は全部コロナ禍を乗り越えて製作されていると思うのだが、リアルに時間の流れが分かるドキュメンタリーは余計に感慨深い気持ちにさせた)。

 

 男子小学生が相手でもしっかり対話することを重要視し、何より男子の悪いジェンダー規範に対して哲学と対話で意識的に取り組んでいる姿は凄いと思うと同時に、それくらい日常に暴力と負の歴史が根付いているということが見えてきて非常に暗い気持ちになる。しかしそれ以上にこのドキュメンタリーはユーモアで貫かれていて観ていてたいへん面白い。子どもたちの無邪気さは愛おしいし、哲学の授業や対話に積極的に参加するシーンは凄いし、問題を抱えた少年が自分の気持ちを正直に吐露するシーンは本当に胸がキューっとなる。何よりケビン校長が強者で魅力的な人物だ。なぜあんなマッチョなのか...。体を異常に鍛えることと男性性の誇示と哲学についてもう少し追求してもいい気がしたが、あくまでこの映画の中心は子ども達だということだろう。またやはり男子小学生を迎えに来るのが母親が多かった点とケビン校長は4人も子供がいるのだが、妻や自らの子育てに言及しないのは少し気になったが、ここもこのドキュメンタリーの視点とは違う意見なので、あくまで個人の疑問にとどめておきたい。(まあこの手の活動や援助を女性は日常でやっている人が大半なので、映画の中におさめる必要もないだろうと製作者ないし出資者には思われているのだろう)

 

 この映画を観て、このドキュメンタリーの反対に位置しているのが日本の学校現場だと思うが、この手の教育を日本に導入するのは難しいだろうな。まあどちらにせよ私は学校が嫌いでかつ部活動でイジメにあったり顧問の先生からも必要以上にイジメられていたので、この学校にいても、日本の学校にいても居場所なかっただろうな。やっぱり学校大っ嫌いである(←映画関係ない!)