@GB19940919’s diary

GB(https://twitter.com/GB19940919) (twitter→GB19940919)の映画感想雑記です。劇場で観た映画からWOWOWやサブスクで観た映画やドラマの感想です。

『午前4時にパリの夜は明ける』

 

『午前4時にパリの夜は明ける』(Les passagers de la nuit) [2022年フランス]

 

1981年、パリの街は選挙の祝賀ムードに包まれ、希望と変革の雰囲気に満ちていた。そんな中、エリザベートは夫と別れ、子どもたちを1人で養うことに。深夜放送のラジオ番組の仕事に就いたエリザベートは、そこで家出少女のタルラと出会い自宅へ招き入れる。タルラとの交流を通し、エリザベートや子どもたちの心は徐々に変化していく。

監督はミカエル・アース。出演はシャルロット・ゲンズブール(エリザベート)、キト=レイヨン・リシュテル(マチアス)、ノエ・アビタ(タルラ)、メーガン・ノーサム(ジュディット)、エマニュエル・ベアール(ヴァンダ)ほか。

 

 全体的に非常に雑な映画である。エリザベートとマチアスの人生に突如現れたタルラを中心に人間ドラマが繰り広げられるのだが、観終わった後に訪れる率直な感想が「で、結局何が言いたかったの?何もせずに7年間過ぎただけじゃん」である。というのも脚本が何か起こっているように見せて実は何も起きてない群像劇だからだ。人間だけ存在して、そこにドラマが無いというか。それなのにセックスシーンも4回も見せられてさ、「ハイハイ、おっぱじまりましたよ」と心の中で呆れた拍手する始末だ。恋愛が大好きなのは別に良いが、それを映画の中で表現するにはあまりに雑なんだよ。

 

 夫と別れたばかりのエリザベートがラジオ局の受付をやり始めてそこから何かを掴んで映画の展開を作っていくのかと思いきや、働いている中で急に同僚と職場でおっぱじまる。そこから何となく時が流れて図書館でも働き始めて、その図書館の利用者の男性とイイ感じになり恋愛関係に発達する。これで終わりである。エリザベートが恋愛にしか興味ないような人物描写になってしまっている。乳癌の乳房を摘出した設定も特に活きてないし、それなのに摘出した裸を何回も見せるので、意味が分からない。また映画のラストでエリザベートが旅立つ息子マチアスに夫別れた日から書き留めていた日記を手渡してその日記の中の言葉で映画を締めるのだけど、まずそれが強引である。エリザベートが言葉とか詩に興味がある人なら、尚更ラジオ局や図書館での労働から何か得てそれが創作意欲に繋がる描写が必要である。とにかく人物描写が雑である。

 

 一番この映画で悪いのがタルラの人物描写である。タルラは両親との不和が原因で家出し、その日暮らしを続けている若い女性だが、それを不憫に思ったエリザベートが家に招く。そこからエリザベートとタルラが孤独を分け合い成長し互いに自立していく映画を作ればいいのにな~と思ったけど、本作ではタルラと仲良くするのがエリザベートの息子であるマチアスだ。色々あってマチアスとセックスして、その日にまた家出し行方不明になる。そして数年後にまた現れてまた去っていく。タルラは分かりやすいくらいのマニック・ピクシー・ドリーム・ガールだが(久しぶりに見たぞ)、彼女の自尊心の低さをカバーする人物描写はない。タルラは「男なんて全員クソだ」とこの映画で一番良いセリフを吐くんだけど(エリザベートにはしかめっ面される...この映画はシスターフッドとかに興味ないんだろうな)、そんなセリフを吐くのは彼女が男性の気持ちを深読みしすぎて、「きっと男はセックスしたいはずだ。ただ優しいだけの男なんていない。マチアスもセックスしたいはずだ」と思ってしまう子だ。だからこそマチアスはタルラとの恋愛関係は拒否して欲しかったな。シスターフッドに興味ないのなら、せめてマチアスという男性の視点からタルラという女性を救ってほしかった。それすらこの映画はしないのだ。本当に雑だと思う。

 

 あと映画の内容と関係ないけど、日本語タイトルのダサさをどうにかできなかったのかな。今月も観たフランス映画の『パリタクシー』もあんまりパリ関係なかったけど、本作もパリあんまり関係なかったのにタイトルにパリが付いていてこっちが恥ずかしい。日本語タイトル考える人に聞きたいんだけど、なんでパリって付けたがるの?こういう映画を観に来る客層って別にパリってついてなくても観に来ると思うんだけど...「日本人の中で"パリ=おしゃれ"だと思っている人が多いからパリって付けておきましょう」ってなるのかな。なんかダサいとか通し越して呆れる。同じようなタイトル付けられると、後でその映画のことを思い出しにくいし、現に検索もしにくい。試しに映画サイトで"パリ"で検索してみて欲しい。同じようなタイトルの映画がたくさん出てくるから。