@GB19940919’s diary

GB(https://twitter.com/GB19940919) (twitter→GB19940919)の映画感想雑記です。劇場で観た映画からWOWOWやサブスクで観た映画やドラマの感想です。

『リスペクト』

シスターフッドにリスペクトを

 

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『リスペクト』(Respect)

 

ソウルの女王アレサ・フランクリンの半生を演じた伝記ドラマ。少女の頃から、その抜群の歌唱力で天才と称されたアレサは、ショービズ界でスターとしての成功を収めた。しかし、彼女の成功の裏には、尊敬する父、愛する夫からの束縛や裏切りがあった。すべてを捨て、彼女自身の力で生きていく覚悟を決めたアレサの魂の叫びを込めた圧倒的な歌声が、世界中を歓喜と興奮で包み込んでいく。

 

 いわずも知れたアレサ・フランクリンの伝記映画である。流行のミュージシャンの伝記映画であるが、本作ではまずタイトルがアレサの代表曲からとっている。リスペクトとは尊敬という意味であるが、文字通りアレサの人生や音楽に最大限のリスペクトがあって作られている。

 

 一番リスペクトを感じたのが、本作で描かれるシスターフッドである。アレサの人生にはあらゆる場所で支配的な男性たちがたくさん出てくる。父なる神、アレサの父親、幼少期のアレサに暴力を働いた男、レーベルの社長、バンドのミュージシャン、そして夫やボーイフレンド。この男たちの存在は脚色でなくまぎれもない本当の話なのだと思う。だったらその支配的な男性に抵抗し自由を取り戻し自分自身へのリスペクトを取り戻すまでがこの映画の肝だ。

 

 その肝を上手く表現するために本作ではシスターフッドに焦点を当てている。まずアレサの姉妹である。たまにアレサと意固地になって喧嘩が絶えない姉妹だが、アレサの才能を一番に信じ、そして高見の方向へ支えてくれ、時に曲のアイデヤや実際に共作もする。何よりアレサが夫からの暴力から逃げてきたときは本当に一番の味方になっていた。次のシスターフッドが幼少期のアレサのお手本であるダイナ・ワシントンから受けるアドバイスである。アレサのニューヨーク公演に駆け付けたダイナの前でアレサがリスペクトの意味を込めてダイナのカバーソングをしようとした瞬間に「ビッチ!」と蔑み、楽屋でアレサに説教するが、そこでオリジナルの曲を歌えと諭すのだ。これはアレサの才能とキャリアを信じでいるダイナ流の不器用なシスターフッドだ。(ダイナを演じているのはジェニファー・ハドソンの先輩であるメアリーJブラッジが演じている!)そして一番のシスターフッドがアレサとアレサの母との関係だろう。最後アレサがアルコールの問題を抱え、仕事にまで支障が出てアレサ本人も完全に参った時にまるで神様のようにアレサの母が登場するシーンがあるが、あれはまるでキリストが復活するシーンに似ていた。そしてその復活を見たアレサが自らのルーツである教会でゴスペルアルバムを制作するという、アレサのミュージシャンや一人の人間としての在り方を提示していた。これは究極のシスターフッドだった。(このゴスペルアルバムと教会でのライブシーンは後にドキュメンタリー映画になっている)

 

 本作の監督はリーズル・トミーという黒人女性監督だ。アレサ・フランクリンを演じるジェニファー・ハドソンは文句なしに凄いし。まあ確かに音楽伝記映画として少し凡庸な気がするが(特にライブシーンはもうちょっと歓声が聞こえてきてもいい気がする)、それでもぜひ多くの人に観ていただきたい。