@GB19940919’s diary

GB(https://twitter.com/GB19940919) (twitter→GB19940919)の映画感想雑記です。劇場で観た映画からWOWOWやサブスクで観た映画やドラマの感想です。

『ブエノスアイレス 4K』

1人でタップダンスばかり踊っている2人が息を合わせてタンゴを一緒に踊れば魅力にあふれるに決まっているだろう

 

ブエノスアイレス 4K』

欲望の翼」のウォン・カーウァイ監督のもと、レスリー・チャントニー・レオンが恋人役を演じ、アルゼンチンを舞台に繰り広げられる男同士の切ない恋愛や人間模様を描いたラブストーリー。

激しく愛し合いながらも別れを繰り返してきたウィンとファイは関係を修復するためイグアスの滝へ向かうが、途中で道に迷って言い争い、そのままケンカ別れしてしまう。その後、ブエノスアイレスのタンゴバーでドアマンとして働いていたファイのアパートに、傷ついたウィンが転がり込んでくる。仕方なくウィンを居候させるファイだったが、ケガから回復したウィンはファイの留守中に出歩くように。そんな中、転職して中華料理店で働きはじめたファイは、同僚の青年チャンと親しくなる。

第50回カンヌ国際映画祭で最優秀監督賞を受賞した。1997年に劇場公開。18年2月、カーウァイ監督の「欲望の翼」デジタルリマスター版の公開にあわせて、Bunkamuraル・シネマで特別上映。2022年には4Kレストア版が「WKW4K ウォン・カーウァイ4K」(22年8月19日~シネマート新宿、グランドシネマサンシャイン、シネマシティほか)で上映。(映画com.より)

 

 いつか観てみたいと思っていた作品『ブエノスアイレス』が4Kで上映するとうことで劇場で観てきた。とても良かった。

 

 モノクロとカラーのうつりかわりが美しく、脈絡のない会話や「こんなもんだよな」とこちらが勝手に飲み込まないといけないストーリー展開など、きっと90年代に観たら斬新だったに違いない。そして香港を代表する2大スターがゲイカップルを演じる凄さ。何よりリアルなのがカップル表象だ。二人ともハンサムだけど、どっちも性格に難があり、事あるごとに喧嘩したり、経済格差と性格差がまじまじと二人に襲い掛かる感じ。本当に90年代の映画とは思えないくらい、私が近年観た作品群の中で一番リアルを感じた。

 

 映画の裏話として、トニー・アレンがゲイの役を敬遠してたとか、ウォン・カーウァイ監督がレスリー・チャンとの関係が微妙だったとか色々逸話が多い映画である。(そしてその逸話がこの映画のプロモーションに使われたりしただろう) しかし冷静に考えると、トニー・レオンのゲイ役を敬遠した話の真意は微妙だ。情報源要出典だ。またレスリーと監督の関係が悪かった話も、そもそも監督がしっかりと役者とコミュニケーションを取らなかったのも原因だ。軽くメモだけ渡してあとは役者に全託しという演出らしく、当時は斬新だったけど、少し無責任な演出方法だ。それゆえスターに頼らざるをえなくなる側面があるし、だからこそ監督とコミュニケーションが必要になるわけだ。また当時のレスリーのスケジュールをとるのに大変苦労したらしく、監督の演出方法に合わないスケジュールを詰め込まれていたのではないかと思う。これはレスリーのマネジメントの責任でもある。まあ色んな要因が重なったためなのか、確かに映画の脚本が変なところがあるわけか。

 

 ウィン(レスリー)とファイ(トニー)は互いに共依存みたいな関係で大変よろしくない。最後は互いの未練と依存の気持ちを切りはなすために別れる。(愛のためだ) 同性愛のラブストーリーというよりかは、クィアの成長物語である。それゆえ第3者の存在がある。こういうクィアの成長物語を失恋を伴うかたちで90年代にやったのは大変先見の明があると思うが、同性愛の愛は実らないほうが魅力的だということを芸術の中で強く印象付けてしまったと思う。

 

 2022年に観ると、どうしてもファイがわがままだし、ウィンのパスポートを隠すのはDVだろって感じだ。(ラストはファイが部屋にパスポートを置いていきウィンがそれを発見し泣いているというラストに一票入れる) それでもファイが悪い男らしさを内面化し、ウィンが女性らしく見えるステレオタイプな表象だが(冒頭のセックスシーンもそうだが)、ファイは弱ったウェイを看病し料理を作ってあげたりとステレオタイプを反転しようとする試みを感じた。(まあファイは看病し弱っているウェイに愛情を感じていた。(この辺はPTAの『ファントム・スレッド』みたいだ) 別れることは分かっていてもそこに愛情を感じてしまうだろうなウィンとファンは。1人でタップダンスばかり踊っている2人が息を合わせてタンゴを一緒に踊れば魅力にあふれるに決まっているだろう。