@GB19940919’s diary

GB(https://twitter.com/GB19940919) (twitter→GB19940919)の映画感想雑記です。劇場で観た映画からWOWOWやサブスクで観た映画やドラマの感想です。

『パリ13区』

『パリ13区』

 

再開発による高層マンションやビルが並び、アジア系移民も多く暮らすなど、パリの中でも現代を象徴する13区を舞台に、都市に生きる者たちの人間関係を、洗練されたモノクロームの映像と大胆なセックスシーンとともに描き出していく。コールセンターでオペレーターとして働く台湾系フランス人のエミリーのもとに、ルームシェアを希望するアフリカ系フランス人の高校教師カミーユが訪れる。2人はすぐにセックスする仲になるが、ルームメイト以上の関係になることはない。同じ頃、法律を学ぶためソルボンヌ大学に復学したノラは、年下のクラスメイトたちに溶け込めずにいた。金髪ウィッグをかぶり、学生の企画するパーティに参加したことをきっかけに、元ポルノスターのカムガール(ウェブカメラを使ったセックスワーカー)だと勘違いされてしまったノラは、学内の冷やかしの対象となってしまう。大学を追われたノラは、教師を辞めて不動産会社に勤めていたカミーユの同僚となるが……。

 

 『ベルファスト』『カモンカモン』に引き続きモノクロ映画である。最近の流行なのかと思うが、一方でモノクロ映画は脚本が相当作りこんでいないと映画として面白くなくなってしまうリスクがある。しかし前述した2作品同様に『パリ13区』も大変脚本が優れていた。監督のジャック・オーディアルが女性の映画を作るのなら女性に脚本を書いてほしいというコンセプトのもとセリーヌ・シアマとレア・ミシウスに脚本を書いてもらったそうだ。(それにしてもセリーヌ・シアマは本当に監督としてもすごいのに、脚本家としても大変才能が豊かだ。なんせ私が映画館で大号泣した『僕の名前はズッキーニ』の脚本を担当したのも彼女だからだ)

 

 まず感心したのが、現在のパリを代表する13区を舞台にしているからこそ非白人のカミーユとエミリーを物語のメインにしている。そして奥行きのある複雑な人物描写になっているのも大変良い。エミリーは所謂従順なアジア系女性ではなく、人(特に男性)との付き合いに難があるが、すごく他のアジア女性との友達と仲が良かったり、仕事でよく失敗したりするが、通訳とかにも精通できる大変活発的で魅力ある女性だ。そんなエミリーがルームメイトとしてやってきたカミーユと一時的であるがセフレになり、その後の色々きまづくなって別れるんだけど、それでもエミリーはカミーユのことが好きでそれでもそれが上手く言えなくて、カミーユを傷つけてしまう言動をとってしまう。色々あって自分との気持ちに折り合いをつけて、カミーユと再び恋人になる。それまでを非常に丁寧に描かれていた。(まあ若干描写が薄かったり、性的に活発過ぎるのにもう少し説明が足りてない気もするが) セックスだけの関係から始まる本物の恋があるんだよということだろう。

 

 そしてそれ以上に良かったのが、ノラとルイーザの関係である。まずノラは復学したにも関わらずある出来事がきっかけで大学にいずらくなり、カミーユが務めている仕事を始めることになり、そしてカミーユと恋仲になるも上手くいかない。(ノラが大学を追われた理由がとにかく理不尽で、あの大学に通うやつらを1人1人殴りたい。ああやってノラを馬鹿にする行為はノラだけでなく、ルイーザにも失礼だし、何よりセックスワーカーには何をしても許されると勘違いしてる職業差別だ) 過去の叔父との10年間に及ぶ恋愛関係のせいで男性との恋愛関係に一種の違和感を覚え続ける。そしてルイーザとチャットしながら本当の自分を見つける。このルイーザとのチャットを通しての会話がとにかく丁寧でパソコンの画面上なのに聖域みたいに美しい。ルイーザもとても優しい心のある女性である。ラストは二人が公園で再会する描写で、そこも大変美しい。おそらく二人はこのあと友達のままなのか、恋人になるのか、それは観客に委ねている。私はセリーヌ・シアマが脚本を手掛けているので恋人関係になるのではと思っている。でも友達のままでもいいと思う。インターネット上の関係から始まる本物の友情or恋があるんだよということだろう。