『いつかの君にもわかること』(Nowhere Special)
窓拭き清掃員として働きながら、4歳の息子マイケルを男手ひとつで育てる33歳のジョン。不治の病に冒され余命宣告を受けた彼は、養子縁組の手続きを行い、自分が亡き後に息子が一緒に暮らす“新しい親”を探し始める。理想的な家族を求めて何組もの候補と面会するが、息子の未来を左右する重大な決断を前に、ジョンは進むべき道を見失ってしまう。献身的なソーシャルワーカーとも出会い、息子にとって最良の選択をしようとするジョンだったが……。
2020年、イタリア・ルーマニア・イギリス合作製作。上映時間は95分。レイティングはG。日本配給はキノフィルムズ。
監督&脚本はウベルト・パゾリーニ。出演はジェームズ・ノートン(ジョン)ほか。
『おみおくりの作法』の監督であるウベルト・パゾリーニらしく、死期が迫った人間が残る人間のために何ができるのか何をするのかを焦点を当てている。そしてこの映画の何かを残される方は子どもである。まずマイケルは4歳であり家族は父親だけなので、まもなくマイケルは独りになってしまう。不器用なりに現実を理解し合うジョンとマイケルの姿には胸が痛むし、大変重い決断をするのだ。映画は静かだがリアルにそれを伝える。
結果的にジョンはマイケルの後見人(または保護者)として、自分たちの置かれた状況に一番似ている独身女性を後見人に選択する。(つまりマイケルを引き取ることで生前のジョンと同じ親子二人だけの環境になる) これは子どもにとって必ずしも親が二人いて経済的に余裕がある家庭が良いというわけではないということだあろう。(もちろんこれは親であるジョンの意思が強く移行されているだろうし、もしマイケルが孤児だった場合はあの女性はおそらくマイケルの後見人には選ばれなかったろう)
地味で静かな演出が続く映画だが内容は素晴らしい。私は平日の昼に劇場で観に行ったのだがかなり観客が多かったので響く層にしっかり映画が届いたと思う。