@GB19940919’s diary

GB(https://twitter.com/GB19940919) (twitter→GB19940919)の映画感想雑記です。劇場で観た映画からWOWOWやサブスクで観た映画やドラマの感想です。

『MEN 同じ顔の男たち』

 

『MEN 同じ顔の男たち』(Men)

夫の死を目撃してしまったハーパーは、心の傷を癒すためイギリスの田舎町へやって来る。彼女は豪華なカントリーハウスの管理人ジェフリーと出会うが、街へ出かけると少年や牧師、警官に至るまで出会う男すべてがジェフリーと全く同じ顔だった。さらに廃トンネルから謎の影がついてきたり、木から大量の林檎が落下したり、夫の死がフラッシュバックするなど不穏な出来事が続発。ハーパーを襲う得体の知れない恐怖は、徐々にその正体を現し始める。

 

 信頼と実績のA24スタジオがまた奇怪なホラーを生み出した。ただしアレックス・ガーランド監督なのでかなりクセが強めで観る人をかなり選ぶ作品だ。(まあ私は面白いと感じだけど)

 

 この映画は複数のモチーフを使っている。劇中で何度も提示される彫刻が二つあってそれが自然の生殖を表現している「シーラ・ナ・ギグ」と「グリーンマン」だ。まず「シーラ・ナ・ギグ」は女性の裸で、膣を広げている。「グリーンマン」は口や皮膚から葉や枝を吐き出す。この彫刻は教会などに古くから存在していたそうだが、彫刻の意味はいまだに詳しく分かっていないらしい。映画の中では、意味があるようで使われているが、監督本人もあまり詳しく説明しおらず、おそらく映画の中の恐怖の演出として使用されているモチーフだと思う。そして実際怖かったし。

 

 次のモチーフはキリスト教だ。屋敷にやってきたハーパーが庭でリンゴを食べるが、あれは聖書にあるエデンでリンゴを食べるイヴだと思う。ハーパーを苦しめる男たち(夫のジェームズも含む)は常にハーパーを探し求めているが、これはイヴを探しているアダムだ。イヴを喪失したアダム。聖書やキリスト教では「アダムがいてイヴがいる」と教える。これは男性による女性支配を正当化する理由として使われるが、しかし視点を変えれば「イヴを喪失したアダムの存在意義はどうなんだ?」ということにもなる。女性に否定された男性はどうなるのか。ラストのハーパーの表情はどこか男性にあきれ果てていたようにも思える。あんなにも男性のダメさ加減を表現した表情はないだろう。

 

 またこの映画は女性の日常にひそむ不条理と理不尽を描いた作品でもある。DVや一方的に女性に理解と愛を求める男性。ストーカーされたり暗い道を1人で歩く恐怖。決して女性の味方とは言えない警察や宗教。これらは全て映画の中でハーパーが遭遇した不条理と理不尽と性差別だ。(それらを恐怖演出として描いているので、フラッシュバック注意でもある。)

 

 そして歪んだ愛を描いた作品でもある。映画の冒頭とラストに流れる"Love Song"。男性の女性への歪んだ愛の物語でもある。