『チルドレン・アクト』(The Children Act)
裁判官のフィオナのもとに、病気の治療のための輸血を信仰上の理由で拒む青年の審判が持ち込まれる。成人には治療を拒否する権利があるが、彼は成年である18歳まで数カ月足りなかった。フィオナと青年の間には、面会を通じて不思議な絆が生まれていく。
原作は未読で映画のみの評価。エボバの証人の輸血拒否事件は有名だ。別にエボバは輸血拒否だけを教義にしているわけではないと思うが、やはりあの事件の社会的インパクトはデカい。
映画は未成年の宗教2世が突然信仰と人生を奪われたら一体誰がその子の人生を保障するんだという話で、全くその通りである。アダム青年は両親と教団とフィオナから実は3回も自己決定権を奪われているのだが、それに反発するため、自己決定権を初めて実行できたのが、自らの自殺になるとはかなり皮肉な話だ。
おそらく欠けていたのは誰もアダムに「どうしてこういう判断にいったったのか」を説明しなかったのが原因だろう。この説明不足からくるコミュニケーションの失敗は現代社会の問題でもあるし、我々人間関係のあらゆるところに潜んでいる問題でもある。それを指摘するために映画の中ではフィオナの夫であるジャックが何度もフィオナに夫婦関係を話し合おうと持ち掛けており、話し合いこそアダムにしてあげるべき大人たちの行動だったのだろう。(それでも11か月もフィオナとセックスしてないからって不倫してやるぞと脅すとは良い身分ですね男性は)