@GB19940919’s diary

GB(https://twitter.com/GB19940919) (twitter→GB19940919)の映画感想雑記です。劇場で観た映画からWOWOWやサブスクで観た映画やドラマの感想です。

『ダウントン・アイー 新たなる時代へ』

映画に助けられた映画

 

 

『ダウントン・アイー 新たなる時代へ』

 

イギリスの人気テレビドラマ「ダウントン・アビー」の劇場版第2作。1928年、英国北東部ダウントン。グランサム伯爵クローリー家の亡き三女シビルの夫トムが、モード・バッグショーの娘と結婚することに。華やかな宴が繰り広げられるが、屋敷は傷みが目立ち、長女メアリーは修繕費の工面に悩んでいた。そんな折、映画会社から新作の撮影に屋敷を使用したいとの申し出が入る。高額な謝礼をもらえると知ったメアリーは、父ロバートの反対を押し切って撮影を許可。一方、ロバートは母バイオレットがモンミライユ男爵から南仏の別荘を贈られたことを知る。その寛大な申し出に疑問を抱いたロバートは、家族とともに現地へ向かう。

 

 1作目より本作の2作目の方が好きだ。個人的に面白いと思うところが結構あって、感想を具体的に言及したいシーンがたくさんあった。

 

 使用人たち全員を恋愛オチに持っていく強引なラスト以外はかねがね良かったと思う。そりゃあんだけ恋愛恋愛してたら、トーマスじゃなくても卑屈になるよね。でもそんなトーマスは、本作でアメリカ(出身はイギリス)からやってきたスター俳優であるガイとイイ感じになって、付き人兼恋人になる大胆な選択をすることになる。これはあのダウントンで実は一番自由な選択をした人で、おそらく一番新たな時代へ向かっていった人だ。ここは前作の映画でも強調されていたが、トーマスはマイノリティ性と特権を持っている人だから選択できたのだ。まああの時代のハリウッドならスターの付き人が実は恋人だったということは結構あったんだろうな。

 

 映画冒頭(というか予告編から気になったのだが)のダウントンにてロバートを演じるヒュー・ボネビルやカーソンを演じるジム・カーターがやけに日焼けしていて違和感を感じていたのだが(同時に面白かったが)、そしたらバイオレットの相続のために南フランスに行くメンバーにその二人が選ばれているという始末(笑) そしてしっかりと南フランスでの撮影シーンがあり、「あぁ、そこで日焼けしたのね」って感じ。この映画はどうやら撮影の順番とかあまり気にしないのかな(コロナで撮影スケジュールに変更があったとかかな)、後でまた言及するがこの本作は映画撮影の舞台裏が一つのモチーフになっているので、本作品の撮影裏もしっかりとしてほしかったなと思う。というか女性キャストはしっかり日焼け対策していたようなので、かえって男性陣の日焼けが目立っていたので、そこはしっかり男性陣キャストも日焼け対策してほしかったな。

 

 映画のラストではバイオレットが死んで、ロバートが屋敷を相続して終わるんだけど、なんかどうしてもイギリスの世相と比べてしまうというか、あの幼稚なロバートが相続するの凄く嫌だなと思う。すぐに娘のメアリーが相続して欲しいと思う。(ここも英国王室みたいで、ほとんどの人はチャールズじゃなくてその息子にすぐに継いでほしいと思っているだろうし、生前相続とかそのうち法制度化されそうである。念のため言うと私は皇室も王室も存在自体に反対である)

 

 そしてダウントンでの映画撮影シーンは非常に面白かった。でもあの時代のハリウッドで製作される映画で、わざわざダウントンで撮影しに来るって結構異例じゃないかな。もしかして当時のハリウッドやアメリカで良しとされる価値観とは相反する映画を作ろうとしていたんじゃないかな。(あの感じだとそういう雰囲気は全くなかったけど) そしたらジャック監督は結構アナーキーな人じゃないかな?そもそも既婚者であるメアリーを口説こうとしてる時点でヤバイな。サイレントからトーキーにうつって映画製作者があたふたするところなんてまんま『雨に唄えば』なんだけど(こっちのほうが撮影裏の史実は正しいらしい)、そこから悪いところをしっかりと直して本作に投影していてとても良かった。例えば突然のトーキーの撮影になれず結果的にメアリーに吹き替えをされてしまうブロンドのマーナが、単に性格の悪い能力の低いブロンド女優という枠組みではなく、ダウントンの同じ労働者階級のデイジーとアンナに励まされて最後まで途中で投げ出さず撮影を完成させ演技への情熱を取り戻すというラストで、『雨に唄えば』の描き切れなかった部分にまでしっかりと描けていて、そこはとても良かった。

 

 最後にずっと思っていたのだが、本作はダウントンでの映画の撮影シーンがなかったら、だいぶ脚本が薄い。だって色々と南フランスであーだこーだやっても、結局ロバートはバイオレットの実の長男でしたっていうオチで、「だったら最初から本人に聞けよ」って感じで、まーとにかく薄い脚本だ(笑) まあこんな実は血はしっかりと繋がっていて正当な継承者ですよ的なノリはもうスターウォーズでさんざんみせられたのだが、まだダウントン・アビーでなら許せるかな(繰り返すスカイウォーカーの夜明けの悪夢) 本当に映画によって救われた映画だよ。