@GB19940919’s diary

GB(https://twitter.com/GB19940919) (twitter→GB19940919)の映画感想雑記です。劇場で観た映画からWOWOWやサブスクで観た映画やドラマの感想です。

『ノースマン 導かれし復讐者』

 

『ノースマン 導かれし復讐者』(The Northman)

9世紀、スカンジナビア地域のとある島国。10歳のアムレートは父オーヴァンディル王を叔父フィヨルニルに殺され、母グートルン王妃も連れ去られてしまう。たった1人で祖国を脱出したアムレートは、父の復讐と母の救出を心に誓う。数年後、アムレートは東ヨーロッパ各地で略奪を繰り返すバイキングの一員となっていた。預言者との出会いによって己の使命を思い出した彼は、宿敵フィヨルニルがアイスランドで農場を営んでいることを知り、奴隷に変装してアイスランドへ向かう。

ロバート・エガース監督。アレクサンダー・スカルスガルド、アニヤ・テイラー=ジョイ、ニコール・キッドマンウィレム・デフォーイーサン・ホークビョークら出演。

 

 最初から最後まで全くA24のロゴが出てこないと思ったら、本作はA24作品ではないらしい。ロバート・エガース監督だから勝手にA24作品だと勘違いしてしまった。恥ずかしい。

 

 ロバート監督の相棒ともいえる動物たちも本作では活躍する。カラスとか狼とか家畜ではない動物たちの活躍が目立つ。逆に馬はひどい目にあいまくる。

 

 撮影も良い、スコアも良いし、あらゆる神話を基に新たな神話を作ろうとしたのか。この辺は去年の『グリーン・ナイト』『LAMB/ラム』と類似している。本作の共同脚本しているショーンは『LAMB/ラム』の脚本も手掛けているので、この指摘は正しいかな。


 ヴァイキングやこの映画の時代か設定から想像できる残虐性はみんな知るところなので、意図的に意味のないヌードやレイプは避けていたので良かった。唯一のヌードだったりセックスシーンは、あの豊穣を祝うお祭りのときだけで不快さはあまりなかった。暗いシーンで実際よく見えないのだが(リアリズムの追求)、逆にああいうお祭りの日以外はセックスを避けていたのが分かる。

 

 愛し憧れた父が実はとんでもない悪い奴で復讐するべき叔父が実は良い奴だったというオチは(自分で進んで農作業する。実はヴァイキングは略奪のイメージが強いが農作業やら貿易などに長けていたそうだ。暴力的なイメージは映画が作り出したイメージで、ここからもこの映画はヴァイキングの真の姿を伝えようとしていることが分かるし、製作側もそれを意図しているのだろう)、シェイクスピアハムレットそのもので面白い。ただの復讐譚にしていないところが映画に複雑性をもたらしている。この複雑性を背負っているのがアムルートの母であるグールトン王妃で、アムルートとグールトン王妃の残酷な真実を伝えられる再会のシーンはさながら舞台を見ているようだった。

 

 こんなにも壮大なストーリーなのにアクションとか戦闘シーンはカメラ一台の長回しで撮影されていたのが、あの時代の戦争のリアリズムを追及してあり監督のこだわりを感じた。リアリズムを追求した映画なのに、『コナン・ザ・バーバリアン』みたいな愛すべき要素もたくさんある。特に映画冒頭のアムルート10歳の儀式のシーンはアレ笑うところだよね。

 

 キャストもすごく豪華なのに無駄なところが全くない。特に魔女役のビョークは反則じゃないかな。(映画のメッセージがビョークの芸術性から離れている感じがするが、脚本家のショーンが過去に何度かビョークと仕事している方ので特別に出演したのかな)

 

 私は映画パワーを感じる作品が大好きなので、必然的に本作は大好きだ。しかし話の落としどころがあまり好きじゃないというか、アムルートにはヴァルハラをめざさないでほしかったなというのが本音だ。ヴァルハラを否定して欲しいし、しっかり生きてオルガと未来を生きてほしかったというのが私の希望のラストだ。それでも本作は強い英雄の映画ではなく、愛の物語にもしていたところ現代にヴァイキングの話を作る意味を与えてくれただろう。