@GB19940919’s diary

GB(https://twitter.com/GB19940919) (twitter→GB19940919)の映画感想雑記です。劇場で観た映画からWOWOWやサブスクで観た映画やドラマの感想です。

『ザ・ホエール』

 

『ザ・ホエール』(The Whale)

劇作家サム・D・ハンターによる舞台劇を原作。40代のチャーリーはボーイフレンドのアランを亡くして以来、過食と引きこもり生活を続けたせいで健康を損なってしまう。アランの妹で看護師のリズに助けてもらいながら、オンライン授業の講師として生計を立てているが、心不全の症状が悪化しても病院へ行くことを拒否し続けていた。自身の死期が近いことを悟った彼は、8年前にアランと暮らすために家庭を捨ててから疎遠になっていた娘エリーに会いに行くが、彼女は学校生活や家庭に多くの問題を抱えていた。

監督はダーレン・アロノフスキー。出演はブレンダン・フレイザー(チャーリー)、ホン・チャウ(リズ)、セイディー・シンク(エリー)、タイ・シンプキンス(トーマス)、サマンサ・モートン(メアリー)。

 

 ストーリー展開がずっと暗い部屋の中でそれが世界を拒絶しているチャーリーを心象の表現している。また本作の時間軸は月曜日から金曜日までの5日間のみだが、これは本作で何度か言及されている信仰と聖書と何か関係があるのだろうか。また地味だが巧みな演出として天気の存在がある。チャーリーが窓から外の様子を窺うように、観客には天気の変化を室内から観察させるのだが、月曜日から木曜日までずっと天気が悪い。最後の金曜日にようやく晴れてまるで後光が射しているようで少し天国を感じさせる場面に見える。もしくは海に繋がっていくイメージで沈んでいた鯨が陸を目指しているように見える。(内の世界にこもっていた人間が外に出ていく) 

 

 大変地味な映画だが非常に理解しやすいモチーフを使った作品でもある。この閉じこもった部屋と時間軸と天気を主人公の心象につなげていく感じは最近だと『ファーザー』に似ているかな。ただし『ファーザー』と違って『ザ・ホエール』のチャーリーの部屋に訪ねてくる人物はみんなチャーリーのことを大切に思っている人たちだと思う。両方がアカデミー主演男優賞をとったのは示唆的でかつ面白い。こういう役が賞を取りやすいのは、世の中的には進んでいるのにどうもその世界に馴染めない幼稚な男性たちが好みそうなセンスで、結果的にベテランでかつ男性が自分によっている感じが投票動向に見えやすいアカデミー主演男優賞の特色なのかもしれない。(だから私は歴代のアカデミー主演男優賞を取った作品がほとんど嫌いなのか)

 

 私はダーレン・アロノフスキー監督作品が積極的に好きではないのだけど、本作はまあ別に悪くない気がしたのはおそらくチャーリーとエリーが最後まで和解したかどうか分からないまま中途半端に終わった方だと思う。これで都合よく和解したらあまり好きじゃない作品だっただろうし。それでも嫌いな要素はけっこうある。まずファットフォビアが酷いし、あんだけ詩と解釈の話をするのに最後チャーリーは適当に投げ出すし、トーマスも逃げ出すの辞めて実家に帰っちゃうし。たぶんこの投げ出す感じは監督の作家性というか、性格なのかと思う。