『TITANE チタン』
幼少時に交通事故に遭い、頭蓋骨にチタンプレートを埋め込まれたアレクシア。それ以来、彼女は車に対して異常なほどの執着心を抱き、危険な衝動に駆られるようになってしまう。自身の犯した罪により行き場を失ったアレクシアは、消防士ヴィンセントと出会う。ヴィンセントは10年前に息子が行方不明となり、現在はひとり孤独に暮らしていた。2人は奇妙な共同生活を始めるが、アレクシアの体には重大な秘密があった。
まず初見の印象がとにかく変態映画でかなりぶっ飛んでいるという映画である。それなのに多ジャンルで切り口がたくさんあって面白い。
まず女性シリアルキラーものであるが、かなりコメディ色も強い。特に映画の前半は殺人を繰り返す凄惨なシーンなのにアレクシアが着ているシャツにNEVER GIVE UPってデザインされていて爆笑である。しかも泊っている家で殺人しまくるのに、次々に宿泊人が出てくる家で思わずアレクシアが「何人いるんだよ」って呟いていたシーンも大変笑えた。
映画のベースはギリシャ神話とキリスト教で、ご丁寧に最後はマリアの受胎(アレクシアが生んだ子供の父親はずっと不在である)とそれを取り上げる男性が神話性を帯びるみたいな感じである。そこで流れるのも聖書の音楽で非常に分かりやすい。だからこそなんか協会にいる気分になっていた。それにしてもマリアの受胎というテーマって男性の存在を消して女性だけにテーマを絞れるのですごく現代的なテーマを含んでいたのだなと感心する。
そしてこの映画はクィアのテーマも含んでいる。過去作との類似があるが、まずアレクシアは色んな人や車をセクシャリティの対象にしている。不思議なことにこの映画はセクシーであるが、男性の性的な願望は一切満たされていないのが面白い。
ボディ・ホラーだとどうしても妊娠がテーマになりやすいが、これは女性監督だし永遠のテーマでもあるなと思う。
それにしても最近私の中で『ガガーリン』『TITANE チタン』と言いフランス映画が熱い。また『シャドウ・イン・クラウド』『ガガーリン』(男女共同監督)『ハッチング 孵化』『TITANE チタン』と女性監督の作品が本当に熱い。