@GB19940919’s diary

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『偶然と想像』

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『偶然と想像』

 

『ドライブ・マイ・カー』の濱口竜介監督初の短編オムニバス。2021年・第71回ベルリン国際映画祭コンペティション部門に出品され、銀熊賞審査員グランプリ)を受賞した。親友が「いま気になっている」と話題にした男が、2年前に別れた元カレだったと気づく「魔法(よりもっと不確か)」。50代にして芥川賞を受賞した大学教授に落第させられた男子学生が逆恨みから彼を陥れようと、女子学生を彼の研究室を訪ねさせる「扉は開けたままで」。仙台で20年ぶりに再会した2人の女性が、高校時代の思い出話に花を咲かせながら、現在の置かれた環境の違いから会話が次第にすれ違っていく「もう一度」。それぞれ「偶然」と「想像」という共通のテーマを持ちながら、異なる3編の物語から構成される。

 

 『ドライブ・マイ・カー』と同じタイミングで撮影されたとは思えないほど大変クオリティの高い作品である。『ドライブ・マイ・カー』は原作が村上春樹だったので全く私の好みではなかったので、むしろ濱口監督のオリジナル脚本の作品でこの監督との相性を確かめたかった私にとって本作を観に行くことは義務みたいなものだった。そして観に行った感想は、もちろん凄く良い映画だった。話の内容はむしろ本作の方が好きだ(特に第3編)。そしてこの監督は普通に職人みたいに映画を作れる人だなと思う。

 

 第1編が正直全く好きじゃなかったんだけど、あの会話劇の中でちょっとした時間軸をいじる演出を全く違和感なく差し込むのは凄いと思う。これは脚本とセリフをじゃべる役者さんの見事な演技のなせる技だと思う。芽衣子がああいう決断を下せたのは、つぐみに愛情と友情の両方を抱いているからだよね。

 

 第2編は面白いというか、小説の性描写をあえて朗読しなぜこの性描写を入れたのかを解説することで、この第2編じたいがその解説したとおりの効果を映画自体に与えていることである。意図せず意図して映画が第3の壁を越えてきて面白いと思った。大変巧みな演出だ。

 

 第3編は大変好きな展開というか、全く面識のない(本当はあるふりをしている)二人があることをきっかけに互いに交流するという話で、おそらくこの映画自体のまとめであり偶然と想像というテーマを一番含んでいる話であり、監督が一番伝えたいメッセージがあると思う。中年のレズビアンの女性が地元に帰ってきて昔好きだった女性との再会を望むという話で(最近観た『ユンヒへ』と同じ物語展開だ)、自分の本当の気持ちを相手に伝えたほうが良いという話だ。これはたぶん監督が一番大切にしていることなのだろうなと思うのは、『ドライブ・マイ・カー』でも似たようなメッセージを含んでいたからである。でも本作はそれを中年の女性同士でやってみせてくれたので、私は『ドライブ・マイ・カー』より『偶然と想像』のほうが好きだ。