@GB19940919’s diary

GB(https://twitter.com/GB19940919) (twitter→GB19940919)の映画感想雑記です。劇場で観た映画からWOWOWやサブスクで観た映画やドラマの感想です。

『ラストナイト・イン・ソーホー』

名前のない女と顔のない男たち。

 

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『ラストナイト・イン・ソーホー』(Last Night in Soho)

 

 ファッションデザイナーを夢見て、ロンドンのソーホーにあるデザイン専門学校に入学したエロイーズは、寮生活になじめずアパートで一人暮らしを始める。ある時、夢の中できらびやかな1960年代のソーホーで歌手を目指す美しい女性サンディに出会い、その姿に魅了されたエロイーズは、夜ごと夢の中でサンディを追いかけるようになる。次第に身体も感覚もサンディとシンクロし、夢の中での体験が現実世界にも影響を与え、充実した毎日を送れるようになったエロイーズ。夢の中で何度も60年代ソーホーに繰り出すようになった彼女だったが、ある日、夢の中でサンディが殺されるところを目撃してしまう。さらに現実では謎の亡霊が出現し、エロイーズは徐々に精神をむしばまれていく。

 

 まずスタイリッシュでかなりテンポよく進んでいく。そして現代のロンドンと60年代のロンドンを比較しながらも両方とも美しくかつかっこよく撮られている。そして何より上手なのは音楽だ。前作『ベイビー・ドライバー』でもそうだったけど、かなりエドガー・ライトはオタク趣味全開の映画を作るけど、でもただのタク趣味に終わらないのがすごいところだ。(ただし人物描写はあいかわらず雑だ)

 

 また主人公が60年代のロンドン文化に憧れを抱く一方、その当時の文化の中で搾取されていた人々のことを知るんだけど、これは「ただの憧れで終わるんじゃなく、その文化や歴史の中で搾取や虐待されていた人々がいたんだ、そういうことを忘れるな」というオタクには大変厳しいメッセージを含んだ作品だ。これはかなり現代っぽい価値観で作られていて、たぶんこの数年のカルチャーの中で培われている批判的文化論(勝手に言葉を作ってみたけど、こういう批判的な見方に言葉があるのか知っている人がいたら教えてほしい)みたいな映画だ。私は大変意義深い作品だと思うし、多くの人に観てほしいと思う。何より主演二人が魅力的だし、ホラー要素もふんだんにあるのに、ちゃんとミステリーになっているのもジャンルをまたいだ良作だと思う。

 

 しかしこういう性暴力自体をホラーの演出に使っているのは倫理的にどうなんだと思う。まず性暴力にあった人やそういうものを見聞きするのが嫌な人はこの映画はかなり辛い。それは当たり前だし、正直ちゃんと宣伝の時にそういうことを通達しておくレベルじゃないかと思う。

 

 あと個人的に心に残っているのが、ロンドンに上京したばかりのエロイーズが寮生活を始めるんだけど、その寮のルームメイトとエロイーズは性格がとにかく正反対でかなり最後まで微妙な関係なんだけど、そもそも「カイリー」と話題が出て、「ミノーグ(カイリー・ミノーグのこと)」か「ジェンナー(カイリー・ジェンナーのこと)」かで意見が分かれる二人は、そもそも性格も合わないだろうな...実はこの辺さらっと流されるジーンだけど、実はちゃんと現代のポップカルチャーにも理解がある人が作っているなと思う。