『エンパイア・オブ・ライト』(Empire Of Light)
厳しい不況と社会不安に揺れる1980年代初頭のイギリス。海辺の町マーゲイトで地元の人々に愛されている映画館・エンパイア劇場で働くヒラリーは、つらい過去のせいで心に闇を抱えていた。そんな彼女の前に、夢を諦めて映画館で働くことを決めた青年スティーヴンが現れる。過酷な現実に道を阻まれてきた彼らは、職場の仲間たちの優しさに守られながら、少しずつ心を通わせていく。前向きに生きるスティーヴンとの交流を通して、生きる希望を見いだしていくヒラリーだったが……。
監督&脚本はサム・メンデス。オリヴィア・コールマン(ヒラリー)、マイケル・ウォード(スティーヴン)、コリン・ファース、トビー・ジョーンズほか出演。
2022年、イギリス・アメリカ合作製作。上映時間は115分。レイティングはPG12。日本配給はディズニー。
まずロジャー・デンキンスの撮影がすごい。自然光と映画館のネオンの光を両方本当に上手に映像に落とし込んでいる。また映画館が地元の文化を支えているのもしっかり伝わってきて映画館文化への愛情も良いと思う。
またヒラリーが男性への付き合いへの問題とメンタルヘルスの問題を抱えているのだが、こういう作品で女性のメンタルヘルスがしっかり描かれているのも良い。その同時進行で描かれるのが黒人青年のスティーヴンとのラブストーリーである。スティーヴンも奥行きのある人物描写があるにはあるが、正直中年白人女性と青年黒人男性のラブストーリーを人種差別のメッセージがある本作の中で描くには少し盛り混み過ぎだ。ヒラリーのメンタルヘルスにだけ焦点を当てるか、スティーヴンの成長物語に焦点を当てるか、どちらかにすればよかったのではないかなとも思う。
気になった点がエンパイア劇場のカーペットがどう見ても映画『シャイニング』のオーバールックホテルのカーペットにソックリだったのだが、あれはオマージュかな。あとヒラリーについて個人的に助言したいことが一つある。ヒラリーはエンパイア劇場をやめた時に仕事仲間から大変心配されていたので、ヒラリーはとてもみんなから愛されていた人だったのだと思うが、それってとてつもない財産なんだよ、ヒラリー。少なくともハラスメントを受けて退職を余儀なくされた私から見たらヒラリーはとても大事にされていたんだよ。(映画とは関係ないね)