トーベのクィアネスにかなり焦点を当てた映画
『TOVE トーベ』
「ムーミン」の原作者として知られる、フィンランドの作家トーベ・ヤンソンの半生をつづったドラマ。日本をはじめ各国で愛されるキャラクターのムーミンたちがいかに生み出され、成長していったか、そしてトーベ・ヤンソン自身の人生のあり方や創作への情熱を描いていく。1944年のヘルシンキ。戦時中、防空壕の中でおびえる子どもたちに語った物語からムーミンの世界を作ったトーベ・ヤンソンは、爆風で窓が吹き飛んだアトリエで暮らしを始める。彫刻家の厳格な父の教えとは相反する型破りな彼女の生活。そして、自分の表現と美術界の潮流とのズレが生じていることへの葛藤、めまぐるしいパーティや恋愛を経て、トーベとムーミンは成長していく。そして、トーベは舞台演出家のヴィヴィカ・バンドラーと出会い、互いに惹かれ合っていく。
監督はザイダ・バリルートという方で製作人にも多く女性が多く名を連ねている作品だ。この映画はムーミンを誕生させた経緯ももちろん語られるが、一番焦点を当てたのはトーベのクィア・ネス、つまりバイセクシャルな生き方である。
ヴィヴィカに進められムーミンの舞台を作ろうとし、そのリハーサル中に演者の一人からなぜムーミンは優しいのかトーベは尋ねられる。するとトーベは「恐怖からだ」と答え、さらに「愛を邪魔されると怒る」と付け加えた。この映画におけるトーベの描かれ方(クィア・ネス)を端的に表現したセリフだと思う。
全体的に少し地味な印象を受ける映画だが、トーベの生き方をしっかりと捉えていると思うし、また登場する女性たちはとても魅力的だ。