『フリーダ・カーロに魅せられて』(Frida Kahlo)
「時代を創った芸術家たちの作品とその背景」をテーマに、映画館の大画面で美術を体験できるドキュメンタリー「アート・オン・スクリーン」の1作。メキシコの現代絵画を代表する芸術家で、フェミニスト、革命家、そして自由な恋愛のアイコンとしても知られたフリーダ・カーロ。現在は「フリーダ・カーロ博物館」となっている彼女の生家「青い家」をはじめ、彼女の作品を所有するメキシコシティの美術館やギャラリー、各国で開催されている展覧会を収録。カラフルな民族衣装をまとい時代のミューズとなった彼女の人生の根底に流れるものを、絵画作品を通して探る。さらに日記や書簡を通し、壊れやすくも激しく燃えたフリーダの魂を解き明かす。
フリーダ・カーロに詳しい人もそうでもない人でも楽しめるドキュメンタリーになっており、彼女の絵画についていくばか解釈を知っている人でもフリーダの研究者たちが新しい解釈を知らせてくれたりして、観て良かった。
フリーダの絵は、出産や流産など女性の身体を美化せず本当の姿で描いたり、ジェンダーが流動的な絵画を描いたり、現代にも十分通じる、むしろより現代的と言えるメッセージを包括した絵画を描いていたのはほんとに先鋭的なまなざしがあった人だなと思う。女性画家による女性のまなざしを描いた『燃ゆる女の肖像』を観たばかりだったので、この映画とフリーダが重なって見えた。
フリーダの生涯の作品の1/3は自画像であることは有名だが、その自画像についても様々な解釈があり、鑑賞する者は本当にフリーダを知ったような気持ちになるのはなぜだろう。
素晴らしい映画だったが、ひとつ指摘するとすれば、本作にフリーダを演じる役者が手紙を読むシーンがいくつか登場するのだが、そこは英語ではなく、スペイン語にするべきだったのではないかと思う。フリーダの生き方自体が、メキソコの文化を大切にしていた人だったので...(まあスペイン語はメキシコにもともとあった言葉ではありませんが...)