@GB19940919’s diary

GB(https://twitter.com/GB19940919) (twitter→GB19940919)の映画感想雑記です。劇場で観た映画からWOWOWやサブスクで観た映画やドラマの感想です。

『ハッピーエンド』

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『ハッピーエンド』(Happy End)

 

カレーに住むブルジョワジーのロラン家は、瀟洒な邸宅に3世帯が暮らす。その家⻑は、建築業を営んでいたジョルジュ(ジャン=ルイ・トランティニャン)だが、⾼齢の彼はすでに引退している。娘アンヌ(イザベル・ユペール)が家業を継ぎ、取引先銀⾏の顧問弁護⼠を恋⼈に、ビジネスで辣腕を振るっている。専務職を任されたアンヌの息⼦ピエール(フランツ・ロゴフスキ)はビジネスマンに徹しきれない。使⽤⼈や移⺠労働者の扱いに関しても、祖⽗や⺟の世代への反撥があるものの、⼦供染みた反抗しかできないナイーヴな⻘年だ。またアンヌの弟トマ(マチュー・カソヴィッツ)は家業を継がず、医師として働き、再婚した若い妻アナイス(ローラ・ファーリンデン)との間に幼い息子ポールがいる。その他、幼い娘のいるモロッコ⼈のラシッドと妻ジャミラが住み込みで⼀家に仕えている。
一家は、同じテーブルを囲み、⾷事をしても、それぞれの思いには無関⼼。SNSやメールに個々の秘密や鬱憤を打ち込むだけ。ましてや使⽤⼈や移⺠のことなど眼中にない。そんな家族の中、ハネケは祖⽗ジョルジュと疎遠だった孫娘エヴ(ファンティーヌ・アルドゥアン)の再会に光を当てる。⽼いた祖⽗は、意に添わぬ場⾯ではボケたふりをして周囲を煙に巻きながら、死の影を纏うエヴのことも実はちゃんとお⾒通し。⼀⽅、幼い頃に⽗に捨てられ、愛に飢え、死に取り憑かれたエヴもまた醒めた⽬で世界を⾒つめている。秘密を抱えた⼆⼈の緊張感漲る対峙。ジョルジュの衝撃の告⽩は、エヴの閉ざされた扉をこじ開ける(情報源)

 

ハケネ監督の作品は今迄観たことがなく、今作が初めて。ハケネ監督は今作のメッセージで、死とSNSに心を捕らわれた少女と孤独な老人男性を通してディスコミュニケーションの現代において孤独な魂の会合が断絶した絆に血が通う瞬間を観客に観てもらいたいらしいが、正直言って非常に分かりにくい。というかSNSがコミュニケーションを断絶したと決めつけること自体ナンセンスだと思うのだが、ハケネ監督にはそう見えるらしい。良く言えばこういう問いかけをする監督は物珍しく見えるし貴重な存在だと思うが、悪く言えば古臭いし。あと移民問題を視点に入れているらしいが、それもなんともパットしてなく、これで移民を捉えたと作品だと批評されているのだとしたら、フランス在住の移民の人々はやりきれないと思う。

 

むしろ私がこの映画を観て一番思ったことは「男(息子、父、夫)、しっかりしろよ!」である。今作のキーパーソンであるエブがあのように死に取りつかれたのは自殺した母親が原因ではなくどう考えても幼いころ別れた父親トマが原因である。トマはとにかくよい父親、よい夫でありたいと思っているが、二言目には自分の子供じみた行動を正当化する理由しかしゃべらなくなる、とんでもない野郎である。子供のエブにすらその子供じみた言い訳で自分がいかに不甲斐ない父親であるかをエブに正当化させるのである。そのくせ浮気には精を出すタイプでその浮気相手と寒い官能小説のようなやり取りすらするのだが、その浮気すら妻とエブにばれていて、半ば飽きられているのであるが、彼女たちにも生活があり、簡単には別れられない。だからこそエブがトマにいうセリフは痛いのだ。(セリフの内容を忘れてしまった...)

 

そして家族の中で顔が一番怖いアンヌの息子ピエールである。(ポスターには映ってない) 正直、何もかもが恵まれた生活を享受している彼に全く優しい気分で見ることができないのだが、とにかくピエールは甘やかされて育った。それが彼の人格形成に悪い影響を与えてしまった。例えば彼は悪げもなくレイシズム的な発言をする。(息子を溺愛するイザベル・ユペールの演技もすごい) 仕事の失敗でやさぐれてカラオケでフランス語でSiaの「Chandelier」を歌うピエールを観て私は「しっかりしろよ!」と思ってしまうのだが、おそらくハケネ監督もそう思うことを許可してくれると思う。

(念のために書いておきますが、私はピエールが仕事ができないことを責める気は全くなく、むしろ彼の普段の言動を見て「しっかりしろよ!」と思いました)

 

そして一番やばいと思ったのがエブにとって祖父であるジョルジュである。彼はエブとお互いの秘密を打ち明ける。ジョルジュは昔、病気の妻を介護していてが、仕事一筋だったジョルジュにとって介護は大変でありおそらくそれが苦になり妻を殺してしまったのである。しかしジョルジュはそのことをあまり後悔していないのである。それとは対照的にエブが打ち明けた秘密は、昔母親が処方しているうつの薬を気に入らない友達の飲み物に混ぜたという秘密である。しかしエブはそのことを泣きながら後悔していた。なぜか妻を殺して達観しているジョルジュとは正反対に人間味あふれる姿をみせてくれたエブ。私は心底「なんだこの男女の意識の差は」と思ってしまったのだ。SNSにとりつかれているエブのほうがよっぽどしっかりしているじゃないか。

 

以上のようにこの映画で描かれているのは男性の傲慢さだ。特に家族問題が絡んだ時の。家族問題のときいつも逃げ出すのは男性だ。そして言い訳で自らを正当化する。まさに「ハッピーエンド」を迎えるのは逃げ出した男性というわけだ。ハケネ監督はどちらの視点に立っているのか知りたい。ということで監督の前作である『愛、アムール』を機会があったら観てみたいと思う。

 

 批評ポイント

①メイドが移民だった

②女性同士の会話はクリア

④過激な描写は特にない

⑥⑦そもそも男性の傲慢さを引き出すのが本作の狙いの一つだと解釈した