『異端の鳥』(The Painted Bird)
第二次世界大戦中、ホロコーストを逃れて東欧のある村の叔母のもとに疎開した1人の少年。しかしある日、その叔母が病死した上、火事で叔母の家も焼失、少年は身寄りを失くしてしまう。
たった1人であてのない旅に出た少年を、行く先々の人々は“異物”と見なし、ひどい仕打ちを与える。それでも少年は、なんとか生き延びようと必死でもがき続ける。
第二次世界大戦中、ホロコーストを逃れて疎開した1人の少年が、様々な差別や迫害に抗いながら強く生き抜いていく姿を描く。ポーランドの作家イェジー・コシンスキ原作の同名小説の映画化。
なお、本作の言語には舞台となる国や場所を特定されないよう、インタースラーヴィクという人工言語が使われている。この言語が映画で使用されるのは史上初めてのことである。
野心的な作品だと思うし、メッセージも理解できる。しかし、不要なヌードやセックスシーンが多く私にはポルノグラフィティに見えてしまう。また人が殺されるシーンや死体などがただの死体ポルノのようである。この繰り返しを3時間近くみせられて、私はただ観客を試しているだけであって、映画として何か優れているとはあまり思えなかった。
まず少年が鳥使いのおじいさんの元にいたときのおじいさんと行為をする女性。おそらく身なりから村に定住せず売春しながら暮らしてるんだが、特に台詞はなくフルでヌードになって、セックスするだけで何も彼女の背景は分からない。挙げ句の果てに村の女性たちにボトルを性器に突っ込まれて死ぬという残酷な死に方であった。これを少年の目線で見せられるという地獄。また冬を越えて湖で助けてもらった女性宅で暮らすことになるが、ここも意味が分からないヌードシーンがある。その女性はだいぶ年の離れた夫がいてその夫の介護をしており、おそらくセックスレスである。そのため堂々とマスターベーションするし、性的に成熟してない少年をセックスに誘ったり、またセックスに連れない少年の目の前で羊と姦淫するのだか、もう意味が分からない。ただのポルノグラフィティじゃん。村の女性が性的に奔放であるというただのステレオ・タイプじゃないか。また少年が初めて殺人衝動を覚えるのも、その女性のせい、魔女に騙されたみたいな感じで、かなりミソジニーである。
映画は特定の国が舞台であるが、明らかに第二次世界対戦下の東欧諸国がモデルである。第二次世界対戦下の東欧諸国はナチスやソ連の支配にあい、その土地にいた女性たちは性暴力にあっている。中には結婚し子どももいる女性たちや合法の慰安婦や売春婦になった女性たちも大勢おり、性暴力と結婚や恋愛の線をひきづらいほど複雑な事情などがあったという本を読んだことある私にとって、女性たちの人生や体験をこの映画はただのポルノのように消費しているように見える。そのため私は『異端の鳥』は好きではない。