「ほぼ史実に基づく」って書けば許してもらえると思うなよ.....
『ヴィクトリア女王 最期の秘密』(Victoria & Abdul)
よく本当に今の時代にこんな映画を作ったよ、逆に感心する。まず食事のシーンなどユーモアがあって面白いシーンはあったし、インドからやってきたムスリムのアブドゥルが白人の英国人の度肝を抜くシーンなどは痛快だった。
しかしそれ以上にこの映画はひどい。とにかく最後の最後までヴィクトリア女王のわがままに回りが翻弄されるんだけど、それがまず嫌だった。もちろん一筋縄ではない女性が主人公の映画ということで、それ自体はかなり画期的だと思う。でもさ、一人の上司の気まぐれで振り回されるなんて見ているこっちは嫌だよ。
またアブドゥルがどうしてヴィクトリア女王にあそこまで使えるのかが全く分からなかったし、どちらかというとアブドゥルの友達であるモハメドのほうが自然なだし、態度だった思う。彼のほうがよっぽど人間味あふれた役だった。あんなにヴィクトリア女王にお気に入りになってもあとでひどい扱いを受けるんだけど、王室で働いている周りの連中は何んにも変わってないし、そのくせアブドゥルはインドに帰っても女王を思い続ける演出で、凄い違和感を覚えた。
あと一番腹が立つのが、ヴィクトリア女王はアブドゥルへの寵愛の言葉を吐くんだけど、「支配者が何言ってんだよ」以外の感想がないし、とにかく失礼な奴だ。
2010年にアブドゥルの日記が見つかったのを機にこの映画が製作されたらしいのですが、アブドゥルがどういう人物だったのかなんてどうでもよく、「こういうことが大英帝国時代にあってよ、あのヴィクトリア女王と親友だったムスリムのインド人がいたんだぜ、凄くね?俺らの女王」的な制作サイドの傲慢を感じ、植民地側のアブドゥルの経験を都合よく拝借した、ただの21世紀の植民地主義映画だ。だから「ほぼ史実に基づく」という片腹痛い一言を映画の冒頭に添えたんだろうね、最低だ。